内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

2016北海道ツーリング【3】

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函館では毎回朝市を訪れている。
とはいえ、大抵前夜の『ラッキーピエロ』での暴食が祟り、雰囲気を味わうだけに留めていたのだが、今朝は中津川さんと一緒に丼を食らうことにした。

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朝から少々贅沢ではあるが、これも旅の醍醐味というやつだ。
すっかり観光スポットになっているため、コストパフォーマンスについては少々疑問が残るが、それも含めて気分ということにしておこう。もちろん、味には間違いがない。

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日本海にそって北を目指す中津川さんとは、ここでお別れだ。
手を挙げて国道227号へ左折していく彼とは、縁があればまた道内ですれ違うこともあるだろう。良い旅になりますように。
 
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カードを求めて、函館近郊のダムを2つほど訪れる予定だが、さすがにまだ時間が早過ぎる。なので、新中野ダムの少し下流にある笹流ダムに立ち寄ってみた。
ここはカード配布はしていないが、学生時代の先輩からオススメされていたのだ。それにしても、これほど市街地に近いダムも珍しい。佇まいもちょっと珍しく、放水路が見当たらないのだ。堤体の造りといい、特徴的なダムだ。


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ちなみにダムへの入り口を間違えて、ちょっとしたダート走行を初めて自分のアフリカツインで楽しむことになったのは、ここだけの話。突然現れた木陰の中のヒルクライムは砂利が浮いており、スロットルオンでトラクションコントロールがフルで介入。危うく失速しそうになるものの、シフトダウンとトラコンレバーを慌てて操作し、何とか登り切った。
視界が開けたところは畑の中だった。森の向こうに函館の市街が見える。ハプニングではあったが、少しだけ新しい発見をした気分だ。
 
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新中野ダムでカードをもらい、次の矢別ダムを目指す。
管理所の呼び鈴を鳴らすと、汗だくで下着姿の職員が出てきた。ついさっきまで草刈りをしていたそうだが、あまりのラフすぎる格好にこちらが面喰ってしまった。カードを手渡しながら、「急いでるか?良かったらコーヒーでも飲んでいけ」とぶっきらぼうに言う。まさかダムに来て、おもてなしを受けるとは思っていなかった。予定の無い旅に急ぐ理由など無い。ありがたく頂くことにした。
あごに立派な白い髭を蓄えたその職員は、65歳だという。自分のこと、神奈川に住む息子のこと、道内のダム事情から、果ては政治のことまで。恐らくは、管理所に一人で詰めているのだろう、次から次へと話が途切れることが無かった。30分以上も長居しただろうか、そろそろと自分が腰を上げると、「ちょっと待ってろ」と言って中からカステラとインスタントコーヒーの箱を持って来た。「よかったら、持って行け」。相変わらずのぶっきらぼうな口調ではあるが、緩んだ頬に優しさを見た思いがした。素直に好意に甘えておこう。「気を付けて行けよ」。ゴツゴツした大きな手と力いっぱいの握手を交わし、ダムを後にした。

高校の修学旅行で泊まった宿のある鹿部を抜けて、国道5号に合流する。噴火湾を右手に見ながら、ひたすら走り続ける。
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幌別の市街地を左へ折れた町外れに幌別ダムがあった。地図で見ると、道道327号はその先で行き止まりになっているらしい。並行して流れる川を何度か交差しながら、熊笹の生い茂る鬱蒼とした舗装路を進んでいく。
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5kmくらい走っただろうか。突然道は終わりを告げた。
駐車場のその先に、ゲートが閉まってはいるが山の中へと道が続いている。さすがに突破するのも気が引けるし、最近は「○月×日にクマ出没!」という看板を盛んに目にしていたので、ここは素直にUターンだ。
 
幌別セイコーマートでコーヒーを飲みながら一息ついた。すでに15時を回っていたが、朝食をしっかり食べていたのであまり腹は減っていない。矢別ダムの管理人とのやり取りを思い出しながら、貰ったカステラを食べた。

明日も晴天が続きそうだ。今夜はどこでキャンプをしようかと、バイクに跨ったまま地図を開く。その時だ。ほんの少しバランスを崩した隙に、サイドスタンドに預けていたアフリカツインの巨体が不意に右へと傾いた。抗うことも出来ないままにバイクは右へと倒れた。両手に地図を持っていたため、受け身も取れずに肩から地面に落ちた。「まずい!」起き上がりながら、右肩の違和感に青ざめた。脱臼している。過去に何度か経験していたので、すぐに分かった。
自分で肩を嵌めようと呼吸を整えていると、一部始終を見ていた郵便局員が「今、救急車呼ぶから」と言う。そんな大事にしないで良いから、バイクを起こすのを手伝ってくれと告げると、今度はタンクキャップからオーバーフローしたガソリンをみて、「危ないからバイクから離れて!」ときた。おかげで周囲の誰もが手伝ってくれなくなってしまった。
やがて救急車が到着し、次いで消防の人間がやってきた。自分はといえば、望んでもいない救急車に乗せられ、少し離れた室蘭の病院へ向かっているらしい。扱いは完全に救急患者だ。救急外来では、整形のドクターが手術中なので終わるまで待っていてほしい、という。何度自分で嵌めてしまおうと思ったか分からないが、レントゲンを撮っている事もあり勝手なことは出来ない。
そうしているうちに、次は二人の警官が自分の名前を呼びながら探している。消防から連絡をもらったは良いが、管轄外のため現場を見ていないので状況を教えてほしいという。ただの立ちゴケで、打ち所が悪かっただけだと説明すると、二人揃って拍子の抜けた顔をしていた。それはこちらも同じだ。いつの間にやら、とても大事になっている。バイクのことを聞いてみると、車体を起こしてくれてはいるが、現場で警官が一人張り付いている、というではないか。
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何社か断られはしたものの、何とかロードサービスの手配が付き、病院まで持ってきて貰えることになった。この時点で、まだ肩は脱臼したままだ。
救急搬送から4時間。手術を終えたドクターがようやく処置をしてくれた。手首に重りをつけて、うつ伏せで寝ることと約2分。ガコッという衝撃とともに、肩は元通りの位置へ収まった。再度レントゲンを撮り、湿布をもらう。乗って帰れなくなるから三角巾は要らない、と告げると、ドクターもナースも呆れ顔だ。
長い時間、外れたままになっていたために靭帯が伸びてしまったようで、肩の違和感がひどい。ちょっと油断すると、また外れてしまいそうだ。すでにキャンプどころの話ではない。今夜は市内に宿を探そう。夕飯はコンビニ弁当で済ませ、湿布を貼ってさっさと眠りについた。
 
8/12の走行距離:287.9km、宿:室蘭 エスカル室蘭】
(つづく)