内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

2016北海道ツーリング【2】

810日~11
例年よりも仕事が立て込んでしまい、出発できたのは辛うじて日が変わる前だった。
これも金曜に有休をぶつけると決めたのだから、やむを得ないことなのだけれど。

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荷造りは済ませていたので、すでに旅支度は出来ている。
シャワーを軽く浴びて目を覚ましたら、いよいよ出発だ。
蒸せるような湿度が無いのはありがたい。今夜は快適に走れそうだ。
 
杉田のランプから、首都高速湾岸線に乗る。
3車線の一番左を、85km/hのゆったりとしたペースで走るのが何とも心地よい。
逸る気持ちがないわけでもないが、このバイクでのロングツーリングは初めてだ。少しずつ、身体も気持ちも慣らして行こう。
 
昨年は全通した常磐道を経由したが、いわきを過ぎてからの対面通行区間があまりに暗く退屈だったので、今年は普通に東北道で北上すると決めていた。
大型連休前夜ということもあり、那須あたりで渋滞するだろうと読んではいたが、その賑やかさも気分転換にはなるだろう。館林を過ぎたあたりで突然降り出してきて焦ったが、佐野のSAを過ぎる頃にはいつしか雨は上がっていた。
 
鹿沼から矢板まで、渋滞30km
延々と続く車列の間をゆるゆると抜けながら、アフリカツインのスリムな車体と今年の装備の身軽さに感謝する。
GS-Aよりも30kg軽くなった車重と、幸か不幸か入荷が間に合わなかったパニアケースのおかげで、車幅からはみ出る荷物が一切ないのだ。そのため、ハンドルさえ通してしまえば、後ろは全く気にする必要がない。余計な心配をせずに、前にだけ集中することが出来るというのは、疲れ方にも大きく影響するものだ。
…その代わり、ガレージに余っていたボックスを使い回したパッキングはあまりにズボラで、少々みっともないのだけれど。

そしてまた、LEDヘッドライトの明るさが最高だ。
ロービームでは片目点灯となるのだが、それでも十分路面を照らしてくれる。これで両目点灯だったらと望むのは贅沢というものだろうか。
他の車に迷惑が掛からないのであれば、ライトは明るいに越したことはないのだから。
 
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渋滞を抜けて、那須高原SAで1時間ほど仮眠をとった。
それほど疲れもなく、いいペースだと思う。それでも目と頭をを休めることは大事だ。コーヒーで目を覚ましたら、再び先を急ぐ。
 
福島を越えたあたりで、空が白み始めた。
地平線がオレンジ色に染まる。今日もいい天気になりそうだ。時刻はまだ5時前。路肩の温度計は20℃とあるが、メッシュジャケットを通り抜ける風は涼しさを通り越して明らかに寒い。
今までのGS-Aは、大きなスクリーンとボクサーツインの張り出したシリンダーが寒さから守ってくれていたのだが、それと比べてしまえばアフリカツインは寒すぎる。
ファスナーを引き上げて首元のドットボタンを閉め、ここぞとばかりにグリップヒーターのスイッチをオンにした。
 
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宮城県に入ったところで、メーター内に燃料の警告が点いた。最寄りの鶴巣PAで給油する。
ここまで大体450km。メーカーは400kmの航続距離を想定したらしいが、なかなかに良く走る。
メーター内の平均燃費も給油時の実測値も、ほぼ同値の26.6km/Lと出た。上出来だ。
GS-A600kmくらい無給油で走り続けられたが、航続距離と身軽さのバランスで考えれば、自分的にはアフリカツインに軍配があがる。ガソリンがレギュラー仕様ということもあり、十分に満足できるロングランナーだ。
 
FaceBookにあげた自分の書き込みに、同じモトクロスチームの友人である山中くんからコメントが来ていた。
彼も家族とともに車で岩手へと向かっているようで、前沢のサービスエリアで仮眠するとのこと。自分より随分と先を走っているようだ。
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鶴巣を出てから1時間半。
トイレ休憩のために自分も前沢SAに立ち寄ったが、駐車場にそれらしい車は見当たらなかった。
随分時間も経っていることだし、それもそうかと走り出したところ、SA出口の涼しそうな日陰に、それらしいワンボックスを見付けた。彼だ。
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直接会うのは何年ぶりだろう。
彼も自分も、以前のような頻度ではモトクロスコースを訪れていない。遠く離れた場所での偶然の再会は、とても気分が上がるようで何だか嬉しい。
 
例年、安代のジャンクションは東北道の本線で青森へと向かっていた。
しかし、今年は八戸道へと進路をとった。立ち寄りたいダムがある。
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南郷ICで高速を下りて走ること10分ほど、山深い中に静かな湖を湛える世増ダムがあった。
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一発で「よまさり」と読み当てるのは、さすがに難しい。
一昨年訪れた浅瀬石川ダムのように、色使い緑に映えてどこか可愛らしい。青森県のダムに共通する特徴なのだろうか。
 
今日のダム巡りはここだけに止めて、実はもう1箇所立ち寄りたいところがあった。
下北半島にあるもう一つの岬、尻屋崎だ。
この後フェリーに乗船する大間は本州最北端。それに対し、尻屋崎は本州最北東端という触れ込みらしい。寒立馬の野生地として有名なところだが、実は一度も訪れたことがなかったのだ。フェリーの時間まで、まだ少し余裕がある。この機会を逃す手はない。

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原発関連施設の立ち並ぶ太平洋岸を北上し、看板に従って岬へと向かう。素晴らしく気持ちの良い快走路を抜けると、岬の入り口のゲートが現れた。野生馬が出て行かないようにするためらしい。バイクで近付くと自動でゲートが開き、そのまま一本道を進む。
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着いたところは、海と空がどこまでも青く広がる、絶景の地だった。本当に来てよかった。

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青空に浮かぶ白い灯台の周りにある草地に、20頭ほどの寒立馬が思い思いに草を食んでいる。
可愛らしい仔馬も多く、親に寄り添う姿はとても愛らしい。よく目にする写真では厳しい風雪に耐えている姿が印象的だが、今は思う存分に楽園を満喫する季節なのだ。

岬に小さい食堂があったので、少し遅めの昼食をとることにした。
ここ数年は、陸奥湾側の佐井村にある『ぬいどう食堂』の生ウニ丼を目指して来ていたのだが、一度もありつけたことがなかった。
電話で確認したところ、今日も不漁とのことだったが、ここでは尻屋産の生ウニ丼が食べられるらしい。となれば、迷う必要などない。
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運ばれてきた丼を見て「ウニの身が少ない」と思ったのは大きな間違いで、これほどまでに立派なウニをいただくのは初めてだ。ふるふるとした肉厚の生ウニが、温かいご飯の上で溶けていく。これは大当たりだった。
新鮮なムラサキウニは味が濃厚で、ご飯との相性が抜群だ。いつものように食べ進めていくとむしろウニのほうが余ってしまいそうになる。本州の端でしか味わえない、贅沢すぎるランチタイムだった。
 
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あちこち寄り道していたせいで、乗船時間ギリギリになってしまった。
大間港フェリーターミナルに飛び込み、滑り込みでチェックインを済ませる。バイクに戻るやいなや、フェリーへの乗船が始まる。車よりも徒歩客よりも、バイクの乗船が最初となる。本当に危なかった。
車両甲板で船員にバイクを預けて、船室へ上がる。ひとたび横になって落ち着くと、出港したのも気付かないまま、あっという間に眠りに落ちていた。

大間からはわずか90分の船旅だ。まもなく函館到着というアナウンスを聞いてから、のんびりとデッキへ出た。どうせバイクの下船は最後だ。今頃車両甲板は、エアコンを効かせた車のエンジンが発する熱が充満しているに決まっている。慌てることはないのだ。
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18時を過ぎて、函館山の上に半月が輝いていた。
雲一つない快晴の空に、明日の好天は約束されたようなものだ。幸先の良い旅の始まりだった。
 
今年も北海道の地に、バイクとともに降り立つことが出来た。何度経験しても、気分が高揚する瞬間だ。函館の市街地までは10分ほど。今夜は五稜郭の近くに宿を取っていた。親子でキャンプツーリングを楽しむ仲間である中津川さんが、部屋を押さえてくれたのだ。
青森から一足先に上陸していた彼は、すでに宿に着いていた。アフリカツインのエンジン音を聞きつけて、わざわざ出迎えてくれた。久しぶりの再会がとても嬉しい。

今夜の宿は「フェローハウス」。
自分は2度目の宿泊となるが、素泊まり3,000円と格安で清潔な宿だ。
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残念なことに風呂がないので、昨年同様市電に乗って谷地頭温泉に汗を流しに行くことにする。
さっぱりした身体に夜風が心地よい。

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市電が少し前に行ってしまったようで、次は20分ほど待たなくてはならない。
二人とも我慢ができず、電停の前にあるコンビニで買ったサッポロクラシックを開けて乾杯。走り疲れた身体にはこの一本が沁みるように効くのだ。至福の瞬間である。

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五稜郭まで戻り、宿の近くの居酒屋「いか太郎」で改めて再会を喜び、グラスを交わした。
ビールはもちろん、肉厚で脂ののったホッケや活造りの新鮮なイカなど、全てのつまみが旨い。気分的なものもあるだろうが、やはりここは北海道だ。今年もここまで来られたことを幸せに思う。

聞けば、北海道へツーリングで訪れるのはほぼ20年ぶりらしい。
少々興奮気味に満面の笑みを見せる中津川さんは、自分の愛機でここに来られたことが嬉しくてたまらないようだ。そして、それは自分も同じ。ここ数年、毎年訪れることが出来てはいるが、同じ旅など二度とない。明日からの日々に思いを馳せながら、23時過ぎまで飲んで語って宿へと戻った。
 
8/1011の走行距離:946.8km、宿:函館 フェローハウス】

(つづく)