内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

2014北海道ツーリング【7】

◆8月14日(木)
イメージ 1
今日の予定はほぼ白紙。道央エリアのダムは回りつくしたし、16日朝にフェリーに乗るために明日中に函館に着けばいい。昨日までは宿が決まっていなくても、大体どこへ行こうか決まっていたのだから、気楽なものだ。そんなことで、いつもは早仕舞いして走り出すキャンプの朝にもかかわらず、昨日買っておいたパンを食べながらのんびりとコーヒーを味わう。

イメージ 2
とりあえず、「帰りにも顔を出すように」という言葉に甘えて、再び洞爺湖の『望羊蹄』に立ち寄ることにした。無料開放中の『日高自動車道』に乗り、苫小牧市内を目指す。ここまでくれば洞爺湖へは、支笏湖畔から美笛峠を抜けるのが近道だが、別に急ぐ旅でもない。それに、支笏湖へ向かう国道276号は、『ネズミ捕り』のメッカだ。飛ばすつもりはなくとも、シーサイドルートで車の流れに乗って行こう。片側3車線の国道36号は、通勤時間帯を抜けたからか快適なペースで流れている。地元ナンバーの車に付いて走れば、そうそう捕まることもないだろう。要は、目立つ走りをしないことだ。白老で国道を右に折れ、道道86号を伊達方面へ。信号もなく、交通量も少ない。こういう道は本当に気持ちがいい。あっという間に国道453号までたどり着くと、洞爺湖まではもう少しだ。

『望羊蹄』の開店が11時なので、直後であればそれほど混んではいないだろう。予定通り11時半前に到着したが、お盆期間であることを忘れていた。ほとんど空きがないほどに、店内は賑わっていた。顔馴染みの店員が自分に気が付いてカウンター席に案内してくれたが、一番混雑しているタイミングで訪れてしまったようだ。さすがに肩身が狭い。「お昼、まだでしょう」という言葉に甘えて、オムライスを注文した。この店では初めて食べるメニューだ。
イメージ 3
運ばれてきたボリューム満点のオムライスと格闘し、食後のコーヒーを飲み始めた頃に、一段落した店主が顔を見せてくれた。「是非、娘さんに食べさせてあげて」と、段ボール箱を手渡してくれた。開けてみると、大玉のメロンが2玉も入っている。昨夏に娘と訪れた時に、美味しそうに食べていたのを覚えていてくれたらしい。美味しいご飯をごちそうになるわ、お土産までいただくわで、いただきっぱなしでお礼のしようもない。恐縮してばかりだが、定期的に顔を見せに来るのが一番の恩返しだと勝手に解釈していた。礼を告げて店を出ると、手伝いに来ている地元の友人が厨房から手を振っていた。きちんと挨拶もできなかったが、昼時の一番忙しいときだ。ここは黙って立ち去るべきだろう。積もる話の続きは、また横浜に帰ってからにしよう。

走り始めてものの、満腹のために睡魔が襲ってきた。無理せず留寿都の道の駅に隣接する公園にバイクを止めた。羊蹄山を眺めながらベンチで昼寝という、最高に贅沢な時間だ。1時間ほど寝ただろうか、頭もすっきりした。さて、この先どこへ行こう。札幌に転勤中の会社の同僚に会いに行くことも考えていたが、あまりに突然すぎて都合が合わなかった。ここからわざわざ函館と逆方向に走ることもないだろう。羊蹄山の向こうにニセコの山が見える。こんなに天気の良い日に上ったことは無かったはずだ。とりあえず行先は決まった。ここニセコも温泉天国だ。山中にはいくつもキャンプ場があるが、歩いて温泉宿に行けそうな『湯本温泉野営場』にあたりを付けた。

ニセコの駅前を過ぎると、一気に勾配が急になる。スキー場の横を走り抜け、ひたすら上り続ける。日差しは強いが、ジャケットを爽快な風が吹き抜けていく。夢中になってスロットルを開け、標高を稼ぐ。以前ここに来た時は、ジャケットがしっとり濡れてしまうほどの深い霧の中を、寒さに震えながら走った。今日は真逆となる最高の天気だ。久しぶりのワインディングを気持ちよく堪能していた。ところが、どうやら堪能しすぎてしまったらしい。いつの間にか『湯本野営場』を通り過ぎてしまったようなのだ。看板を見落としたとも思えない。いつまでたっても見当たらないので不思議に思っていたのだが、通り過ぎてしまったものは仕方がない。幸いまだ日は高いので、もう少しこのまま先へ進もう。

この先に『神仙沼』とある。右手にドライブインが見えたので止まってみると、その目の前が遊歩道の入口らしい。折角なので、少し歩いてみることにする。
イメージ 4イメージ 7
整備された木道は意外とアップダウンがあり、生い茂る熊笹のためか方向感覚を失いそうだ。15分ほど歩いて、湿原を抜けたところが『神仙沼』だ。
イメージ 5イメージ 6
ほとんど風が吹いていないので、水面は鏡のように景色を映し出している。大汗をかきながらもここまで歩いてきてよかった。
隣で記念写真を撮っている家族連れがいる。どうにもその父親の顔に見覚えがあり、恐る恐る声をかけるとやはり本人だった。バイク雑誌で活躍するHカメラマンだった。同じジャンルとはいえ、カメラマンとしてはパートタイマーの自分のことなど、向こうは知る由もない。しかし、実は23年前にバイク屋のイベントで、一緒にツーリングしたことがあるのだ。そのことを話してみると、どうやら覚えているらしい。こんな北海道の山奥での偶然に互いに驚きながらも、「次は全日本モトクロスの会場で」と先にドライブインへ戻ることにした。

イメージ 8
もう少し走り進むと、右手に海が見えた。日本海だ。手前の街は恐らく岩内だろう。その先に積丹半島が見える。素晴らしい眺めだ。ふと、旅の終わりが近いことに気付くと、胸が締め付けられる思いがした。

時計を見ると、17時を過ぎている。なんとなく、もうキャンプ場へと戻る気力は失せていた。このまま峠を下り、岩内の街に出る。道の駅に併設されている観光案内所で宿の情報を仕入れ、ここから15分ほど走ったところにある『ワイス温泉』という宿に予約を入れた。素泊まりなので、どこかで夕飯を済ませよう。
イメージ 9イメージ 10
案内パンフレットを見ていると、『松尾ジンギスカン』の文字が目に入った。
北海道ではメジャーなブランドであり、スーパーなどでもよく売られているのは目にしていたが、実店舗があるとは知らなかった。昨晩キャンプ場でジンギスカンを食べたことも忘れて、その店へと向かう。座敷に上がり、見慣れた分厚い鉄板の鍋に、ラムとマトンを載せた。ジューシーな肉に、オリジナルのたれが絡んで美味い。やはりご飯が進む罪深いメニューだ。ここでビールを飲めないのが本当にツライ。

2人前を平らげて店を出ると、空は見事な夕焼けだった。今ならまだ間に合うかもしれない。さっきの道の駅の向こうに、岩内の漁港があった。海に沈む夕日が見えるかもしれない。ハンドルを港へ向けた。
イメージ 11
燃えるような太陽が日本海に沈んでいくのを、ただただ眺めていた。昨日今日と、絶景にやられっぱなしだ。しかし、旅の終わりを強烈に意識させられた。道内を走り回るのは明日が最終日だ。感傷に浸るのはまだ早い。セイコーマート鮭とばサッポロクラシックと買い、今夜の宿へと走る。国道5号に面したイメージ 12
『ワイス温泉』は、想像以上に大きな宿だった。オーナーがバイク乗りということもあり、GS-Aを車庫に入れてくれるという。素直に厚意に感謝だ。今夜は夜露にぬらさずに済む。

熱めの温泉が心地よく身体に沁みる。明日も五稜郭で宿をとってあるので、もうキャンプ道具の出番はなくなってしまった。ちょっと贅沢しすぎている感もあったが、それだけ一日中走りに没頭できている事に満足していた。たまにはこういうのも良いか。道内を走り回るのは明日が最後だ。星空が明日の好天を教えてくれる。安心して布団にもぐりこみ、ぐっすりと眠った。

【本日の走行距離:290km】