内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

2014北海道ツーリング【5-1】

◆8月12日(火)
イメージ 1
テントから這い出すと、上陸して初めての清々しい朝日がお出迎えだ。
読み通り、夜半に雨が上がってくれたらしい。キャンプの朝は、やはりこうでなくては。しばらくしてバタくんも起きだしてきた。一緒にコーヒーを啜りながら、雨粒の残るテントを日干しする。
イメージ 2
彼の友人夫妻は、このまま車で宗谷を目指すようだ。
これから南下を始める我々とは、すれ違うことはないだろう。互いの旅の無事を祈り、キャンプ場を先に出発していった。さて、自分たちものんびりと荷造りを始めよう。

美深の街まで戻り、そこから国道275号へと右に折れる。朱鞠内湖へ至る美深峠は、車も少なく、ひたすら高速コーナーが続く。互いに荷物満載のために調子に乗って飛ばすことはないが、青空に吸い込まれるようにスロットルを大きく開けてワインディングを駆け上がる。それにしても、風が強い。横風に煽られながらも、ビッグバイクのパワーにまかせて突き進む。峠を越えて下っていくと、右前方に湖が姿を現した。

イメージ 3
日本最大の人造湖である朱鞠内湖は、あまりのスケールにとても全体を見渡すことができない。一度だけ湖畔でキャンプを張ったことがあるが、『音のない湖』という印象だけが残った。夜など、あまりにしんと静まり返るものだから、かえって不気味さを覚えるほどだ。それでも、自分はこの荒涼とした景色が好きだった。ここを訪れるのは14年ぶり。あの頃と何も変わっていない湖の姿に、嬉しくもあり寂しさもあり、だ。

過去に国内最低気温を記録した母子里(もしり)を過ぎ、そばの産地である幌加内を経て、国道239号を苫前へと向かう。途中の霧立峠を越えると、中速コーナーのワインディングが続く。ひたすら下りとなるので、ブレーキングが忙しい。互いに重量級の車体に荷物をフル積載しているのだ。減速Gでハンドルを押さえつけないように、ひたすら腹筋で耐えるしかない。直線区間が増えてきた頃、遠くに海が見える。ようやく日本海だ。

イメージ 4
通称『オロロンライン』と呼ばれる国道232号を左折し、海岸線を南下していく。苫前といえば、大規模な風力発電のメッカだ。丘を埋め尽くすほどに林立する風車は50基以上にもなる。圧巻の景色だ。そして、風力発電が盛んということは、例外なく安定して強い風が吹く場所であるということ。今日は特に横風が強い。ヘルメットのシールドに波飛沫が吹き寄せてくる。台風11号の余波だろうか、海が激しく濁っていた。
小平のセイコーマートでようやく小休止。11時くらいになっていたこともあり、留萌で昼食にしようと決めた。

イメージ 5
留萌のホクレンで店員にお勧めの店を聞く。ツーリングマップルには『蛇の目寿司』のお勧めコメントが掲載されていたが、そのまま鵜呑みにするのもツマラナイと思ったからだ。しかし、店員のお勧めも『蛇の目寿司』だという。地元の人が勧めてくれるのだから間違いはあるまい。納得してその店を目指す。
12時前のタイミングで店内はほぼ満席だった。駐車場を見ると、他にもツーリングライダーが来ているようだ。それ以上に、地元の方らしい客で溢れていた。これは期待出来る。
イメージ 6イメージ 7
バタくんは刺身定食、自分は三色丼を注文。今回渡道してから初の新鮮な海産物だ。やはり美味い。リーズナブルな価格の割に、たっぷりと刺身が盛られている。これなら舌の肥えた地元の方々が通うのも頷ける。あっという間に完食し、満足して店を出た。

イメージ 8
バタくんは、明朝のフェリーに乗るために小樽を目指すという。
道央方面に戻りたい自分としては、残念ながらここでお別れだ。今年はすれ違いの日程となってしまったために、あまり一緒に過ごせなかったが、それでも北の大地で一緒の時間を過ごせたことに感謝だ。この続きはまた次の機会に…。互いの無事を祈って握手。国道を左右に分かれて走り出した。
風が強いものの、天気はすこぶる最高だ。まだ昼を回ったばかり。今日はどこまで走れるだろうか。とりあえず深川留萌道に乗って、旭川を目指す。

国道12号を市内へ向けて走る。札幌からの幹線道路でもあり、平日からか大型トラックも多い。神居古潭を過ぎると道路が2車線になった。ペースの速い地元の車にくっついてトラックの列を抜いていく。市街地に入る手前で車線減少の標識が出た。前を走るペースメーカーが右の車列に合流していくのをみて、自分はもう一台先に…と欲張ったのが間違いだった。突然、路肩から赤い『止まれ』の旗を持った青い制服の人が飛び出してきた!…が、自分のペースが少しだけ速かったのか、旗の提示が間に合わず、結果後ろの車が止められることに。幸い(?)にもパトカーや白バイはスタンバイしていなかったので助かったのだ。十分に心していたつもりであったが、いつしか速い流れに慣れ切ってしまっていたようだ。改めて気を引き締め、安全運転で行こうと決めた。

市の中心部を迂回するように走る国道12号を経て、国道39号へ。ここでも2区間だけ、暫定開業中の旭川紋別道を通る。先ほどの深川留萌道と同様、現時点では無料解放中。ただでさえバイパスさながらにペースの速い国道なので、片側一車線が主の自動車道を走るのは味気無いだけなのだが、それでも信号の影響を受けないのは目的地へと急ぐ身にはありがたい存在だ。もちろん、後方にさえ注意を払っていれば、取り締まりにあう恐れもない。ここは積極的に利用していこう。

大雪山系の谷間となる層雲峡を訪れるのは、恐らく19年ぶりくらいになるだろうか。あの日は分厚い雲の下を、足寄から美瑛に向かうために通り抜けただけだった。今回は逆回りとなるが、すっかり記憶が薄れていたので、とても新鮮な景色だった。まだ14時頃だったが、未踏の温泉街の誘惑に「今日はこの辺で泊まっちゃおうかな」と一瞬悩んだが、とりあえずこの先にある『大雪ダム』までは行くことに決めた。

山の中に佇む広大な大雪湖に、白い雲と周囲の山並みがぽっかりと浮かびあがる。凪いだ湖面は、まるで鏡のようだ。時折吹く風は、旭川市内と打って変わってひんやりと涼しく心地よい。すっかり層雲峡温泉に戻る気は失せていた。そして、ここまできたならば、と是非見ておきたい景色がこの先にあるのを思い出した。こんな晴れ間に寄り道しないのはもったいない。国道273号で三国峠を目指す。目指す景色は、大雪湖から下って、峠を上り、そこを越えたところにある。

イメージ 9
遠くに石狩の山並みが見える。そして、深緑の森の中に突如浮かび上がる赤い高架橋。
この景色は、ツーリング雑誌などでもよく使われる風景そのものだ。しかし、雑誌とリアルは違う。紙の上で見慣れたこの風景も、19年前の時には霧と雲の中だった。真夏にも関わらず、路肩の温度計が5度を示していたことだけは今でもハッキリと覚えている。しかし、それ以外に見える景色は皆無だった。霧の中へと続くアスファルトが、どちらへ曲がるかすらも分からないほどだ。寒さに震え、層雲峡を抜ける頃には疲労困憊だったのを思い出す。それだけに、この好天の空の下、是非とも見ておきたい景色だったのだ。目指す次のダムとは方向が違うし、このために30kmほど寄り道したことになるが、本当に来てよかったと思う。満足だ。

さぁ、夕暮れ前にもう1ダム巡っておこうか。大雪ダムへと戻り、再び国道39号を東へ向かう。留辺蘂の街の手前で、県道へと右に曲がる。目指す『おけと湖』はもうすぐだ。
イメージ 10
同じ山の中に佇むダムでも、国道に面した大雪湖とは静けさのレベルが違う。
おけと湖を形成する『鹿ノ子ダム』は、少しばかり秘境感漂う辺境のダムのイメージだ。管理所が閉まる17時ギリギリの来訪にも関わらず、笑顔でカードを手渡してくれた。台帳を見ると、この日だけでも、恐らくはカード目当てであろう来訪者が5人以上はいたようだ。ダムマニア、恐るべし、だ。