内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

2014北海道ツーリング【3】

◆8月10日(日)
薄着で寝てしまったのを少し後悔するほどに肌寒い朝。やはり、ここは北海道だ。朝の気温が内地とは10度ほども違う。しかし、ここは再び布団を包まるよりも、喜々として温泉に向かおう。キャンプとは違う、宿ならではの贅沢な過ごし方だ。
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洞爺湖に浮かぶ中島の上に、低く雲が垂れ込めていた。
天気予報では全道的に下り坂。まだ薄日が差してはいるものの、今夜キャンプは難しいかもしれない。

いつもより遅めの9時にチェックアウト。昨晩、店主に誘われていたので、言葉に甘えて再び『望羊蹄』を訪ねることにした。自分のために早くから店に出てくれていた、夏の間に『望羊蹄』を手伝いにきている横浜のバイク仲間が、豪快すぎるトーストを用意してくれた。
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1/2斤くらいはあろうか、おかげで昼飯いらずとなってしまった。
帰りも函館からフェリーに乗ることを告げると、店主から是非帰りにも立ち寄るように、とありがたい言葉をいただいた。後ろ髪を引かれる想いはあったが、そろそろ重い腰を上げなければ。丁重にお礼を述べて店を後にした。

青森県で立ち寄った『浅瀬石川ダム』に続いて、今年のツーリングのテーマは『ダム巡り』と決めていた。昨夏に訪れた際にも7枚のダムカードをゲットしていたが、道内コンプリートのためにはあと10か所ものダムを回る必要がある。予め何となくルーティングしてはいたが、全ては天気次第。カードを集めるために走り回るだけでは、あまりにもったいない。そこにどんなルートを織り込むか、いろいろと試行錯誤する楽しみもあるというものだ。

まずは、今夏の『1ダム目』を目指して、札幌市内へ向かうことにする。留寿都喜茂別を抜けて中山峠を越える。気温はなんと15度!メッシュジャケットでは肌寒さを通り越してあまりに寒い。たまらずGS-Aの大きなスクリーンに潜り込み、グリップヒーターをONにした。そのまま峠を下り、定山渓の手前を右へ。豊平峡へと向かう。
市内には同じ名前の川が流れているが、そちらは『とよひらがわ』。ダムのある峡谷は『ほうへいきょう』と読む。あとでダムの案内所で聞いたところ、「音の繋がりが良かったからじゃないですか?」とのこと。なるほど、そう来たか。

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豊平峡ダムに向かって登っていくと、突然右手に広い駐車場が現れ、その先はゲートで通行止めになった。一般車両はこの先入れないらしい。完全にリサーチ不足…どころか、調べてもいなかった。
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どうやら、そこに止まっているカラフルなバスに乗って行くようだ。駐車場とダムの間は歩いていけないこともないらしいが、折角なのでハイブリッド電気バスとやらに乗ることにする。バスに揺られて5分ほど。トンネルを二つ抜けたところで、視界が開けた。定山湖だ。バスを降りると、すぐ横の急勾配をリフトが動いていた。
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展望台からダム天端を見下ろすと、ちょうど放流中であった。
一般車両の通行がないため、静かな山間に水音が響き渡る。アクセスのしにくさはあるものの、それだからこそ得られるものも大きい。ちなみに、環境保護を目的として一般車両でたどり着けないダムとしては、有名な黒部を含め3か所しかない。そのうちの一つがここだそうだ。

再びバスに揺られて駐車場に戻り、車上の人になる。出発も遅かったが、さらにはのんびりと観光していたこともあり、すでに11時を回っていた。急ぐ旅ではないけれど、夕方に日高で知人に会うつもりだった。とはいえ、近くにもう一つダムがある。ここは当然立ち寄らなくてはなるまい。

札幌の郊外、恵庭市にある『漁川ダム』に向かう。しかし、ここで一つ大きなミスを犯していた。ガソリンの残量がほとんど無くなっていたのだ。豊平峡ダムの時点で残り少なくなってはいたが、支笏湖へ向かう国道453号も『3ケタとはいえ札幌に近い国道』だからガソリンスタンドくらいあるだろう、とタカをくくっていたのだ。しかし、それは完全に甘い考えで、北海道を舐めていたと反省せざるを得ない。上陸して2日目、まだ内地の感覚で走ってしまっていた自分を恥じる。

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とりあえず、まずは『漁川ダム』でカードをゲット。果たして恵庭市街まではどのくらいあるのだろう。GS-Aのメーターには、ガソリン残量から残りの走行可能距離が表示される。インジェクション車ゆえにガソリンコックが無く、リザーブ容量を備えていないためだ。『残り20km』まではまだ心に余裕があったが、表示が『ヒトケタ』になってからは焦りが募っていた。とはいえ、無駄にペースアップして燃費を悪くしては逆効果だ。あと5km、3km…そしてついにメーター表示が『- - -』となった。あとはフューエルセンサー誤差の範囲でしかない。いつエンジンが止まってもおかしくなかった。
地図で見ると街まではあと8kmほど。最悪、バイクを押して歩くことも覚悟したその時、右手に恵庭スキー場が現れた。

「トランスポーターとオフロードバイクが!」

トランポがあるということは、ガソリンを積んできているはずだ。頼み込んで分けてもらおう。Uターンしてスキー場にGS-Aを乗り入れると、エンデューロバイクの集団にとってはあまりに場違いなバイクの到来に、ライダーたちの視線が集まった。事情を話して、2リットルだけガソリンを分けてほしいとお願いすると、快くハイオクを3リットル給油してくれた。しかも、お金はいらないという。『困ったときはお互い様』とはいうものの、藁をもすがる思いだった自分にとっては申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

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話をしてみると、翌週(8/24)に行われる『恵庭エンデューロ』のスタッフだそうで、今日はコースメンテナンスに来ていたとのこと。スタート地点がこのスキー場になるらしい。自分も同じ日に行われる『8時間パワーエンデューロ』のレーススタッフであることを告げると、意気投合し話が弾んだ。心残りはあったが、ガソリンのお礼と互いのレースの成功と祈り、スキー場を後にした。

恵庭の街でガソリンを満タンにする。公称33リットルのタンクにもかかわらず、34リットル近くのハイオクを飲み込んだ。いずれにしても空っぽだったことに変わりはない。さっき分けてもらっておいて本当に良かった。
時計は14時近くを指していたが、朝の豪快なトーストのおかげかまだ空腹には程遠い。日高に行くまでに、もう1つダムを回りたい。北に行くか、東に行くか…日高への到着が遅くなるのはマズイと考え、ここは東へ向かうことにしようか。

道東道占冠へ。高速を降りて左へ曲がれば日高だが、もう少しだけ寄り道して行こう。
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日高と富良野の間にある『金山ダム』へ向かう。先週までの大雨が影響しているのであろうか、こちらのダムも放流中であった。間近に放流口があるために、水の飛沫がひっきりなしに飛んでくる。カメラのレンズフィルターがあっという間に濡れていく。

そうこうしているうちに、太陽が山に隠れ始めた。そろそろ日高に向かおう。
30分ほどで日高の街へ到着。沙流川のキャンプ場でテントを張ることも考えてはいたのだが、今夜はほぼ間違いなく雨との予報。雨の中でテントを張るのは何とか許せても、撤収の際に降られているのは困る。バイクの場合、例え濡れていてもきちんと畳まなくては積みきれないからだ。もちろん、あとで干せばいい話なのだが、旅はまだ始まったばかり。干す時間があれば、少しでも走っていたい。

日高では8/9~10に『RIDING SUN 2014』というオフロードバイクのイベントが組まれていた。そのスタッフの一人で、札幌に住むバイク雑誌の編集長と交流があり、会いに行くと告げていたのだ。昨年も同様のイベントが開催されており、その時は初日から参加し、夜のバーベキューから翌日のツーリングまで、思う存分に楽しませてもらった。今年は行程の関係で終わる間際になってしまうが、必ず行くと決めていたのだ。

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イベント会場の『ひだか高原荘』に行くと、駐車場は閑散としていた。なんと、イベントに間に合わないどころか、撤収まで完了してしまったようだ。しまった、遅かった…。しかし、途方に暮れる自分の元に、一台の白いピックアップトラックが近付いてきた。
開口一番、「遅ーい!」。そう、編集長のH木氏だった。到着の遅れを詫びると、「今夜はどうする?たぶん降ってくるから、このままココ(ひだか高原荘)に泊まって行きなよ。一人くらいなら、部屋は何とかなるだろうから」というありがたいお言葉。ここでも好意に甘えることにする。

この宿も『沙流川温泉』になるので、風呂がとても楽しみだった。昨年はキャンプ場に泊まっていたために、20時までに入浴を済ませなければいけなかったが、今日は宿泊しているので遅くまで入ることができる。実際に到着直後だけでなく、就寝前にもゆっくりと温泉を満喫できた。
H木氏に聞くと、自身はもちろんイベントスタッフも皆、今夜ここに泊まるとのこと。これは嬉しい。どうやらゆっくり語る時間はありそうだ。ゆっくりと温泉に浸かり、食堂に顔を出して驚いた。業界の有名人だらけではないか。
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日高といえば『日高2Days Enduro』の開催地として有名だが、その実行委員長をはじめ、運営スタッフが顔を揃えていた。他にもレースの仕掛け人から世界的なラリーストまで、自分がちょっと恐縮してしまうほどの顔ぶれだった。
しかし、酒が入ればそこは同好の士。共通の話題も多く、話が弾む。いろいろな意味でこの業界は『狭い』こともあり、共通の知人の話題なども飛び出してくる。自分よりも遥かに知見のある『仲間』との語らいに、話は尽きることなく、楽しい夜はあっという間に更けていく。

いつしか、外は大雨になっていた。やはり今日はキャンプではなく宿で正解だ。
本当に今回の旅は、様々な人に助けられ、救われているように思う。まだ2日目ではあるのだけれど。

【本日の走行距離:287km】