内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

2014北海道ツーリング【2-3】

時計は既に16時半を回っていた。ただでさえ内地よりも涼しい北の大地の空気が、更にひんやりとして肌寒いほどだ。今夜は洞爺湖にいつもの宿を予約していた。残りはあと150kmだ。
夕飯をお願いしていないとはいえ、あまりに遅いチェックインも申し訳ない。大沼公園から虻田洞爺湖までは、道央道で一気に距離を稼ぐことにする。
函館市街を抜けて、国道5号に合流する手前で、路肩のパトカーがこちらを向いて停まっている。屋根を見ると、回転灯の上に白い箱が積まれている。実はこれが速度取り締まりの測定器なのだ。ここは北海道、ペースの速い流れに気を良くしていると、スピード違反で一発免停に繋がりかねない。改めて気を引き締め直す。

無事に洞爺湖『大和旅館』に到着。
今回で泊まるのは3回目になるが、値段もさることながら眼下に湖を見下ろすロケーションが好きで、夏の間は部屋の窓から湖より打ち上げられる花火を眺めることが出来る。源泉掛け流しの温泉も非常に心地よい。荷物を降ろすとすぐに、まずは長旅の疲れをゆっくり癒すことにした。熱過ぎずぬる過ぎずでついつい長湯したくなるところだが、腹が減っていることもあり、とりあえず湯船から上がって出かける支度をする。

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宿から湖まで、真っすぐ繋がる道を眺めるのが好きだ。
今夜は湖畔で祭りが行われるらしい。昨年、娘と一緒に来た時と同じだ。

最初に訪れたのは高校2年の修学旅行。その後も、バイクやレンタカーなど手段は変われど、北海道に来ると必ず訪ねる店がここにある。

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1946年から68年続く、老舗の洋食レストランだ。
自分がこの店に最初に訪れたのは、23歳の夏のこと。地元のバイク仲間がこちらの店主の親戚に当たる方で、夏の間は厨房を手伝っているとのこと。自分も北海道にツーリングに行く話をしたところ、「是非とも寄っておいで」と誘ってくれたのがきっかけだった。遠慮なくお邪魔したところ、美味しい食事をご馳走になるだけでなく、その方が泊まっている宿にも一晩ご厄介になるなど、大変お世話になってしまった。
以後も、渡道するたびにこちらを訪ねているが、繁盛しており忙しい店であることは承知しているので、特に連絡もせずに訪れていた。しかし、それでも店主を始め店員の方々が自分なぞのことを覚えていてくださり、その度に大変お世話になってしまう。結婚するまでは毎年訪れていたし、カミさんと北海道にツーリングに来た時にも当然のように寄らせていただいた。そんな縁で、自分の結婚式にもわざわざ洞爺湖から来ていただいたほどに、自分のこの店に対しての思い入れは非常に深いものがあるのだ。

そして、最初にこの店に訪れてから、20回目の今夏。
迷うこと無く洞爺湖、そしてこの店は真っ先にルートに組み込まれていた。
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そして、今年の夏もまた、地元のバイク仲間が先に来てくれていた。
厨房が一段落したところで、再会を喜び合う。そして、空腹の自分のお目当ては、やはりこれ。

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この店の『ポークチャップ』は絶品なのである。
特にこのデミグラスソースがあれば、ご飯は何杯でも行けるのではないだろうか。今年も変わらぬこの味に舌鼓を打ちながら、キンキンに冷えた生ビールをいただく。この瞬間のためにここまで来た、と言っても過言ではあるまい。
友人と話しながらゆっくりと過ごしたいところではあったが、急に店が混んで来たこともあり取り急ぎ中座。閉店後に再訪するようにお誘いいただいたので、とりあえずは店を後にした。

一度宿に戻り、再び温泉へ。美味しい夕飯と冷えたビールで満たされた幸福が、この湯船で倍増されるとでも言えば良いだろうか。この時点では、家族をおいて一人で出て来たことに対する、少しばかりの罪悪感は霧散していた。いや、本当に自分ばかり楽しんで申し訳ない。

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部屋に戻ると、湖上に見事な花火が上がっていた。
観光客相手がメインであろうこの街だが、2000年の有珠山噴火で一度は客足が大きく遠のいたこともあった。それでも、少しずつ街は活気を取り戻し、そのために様々な取り組みが行われていると聞く。花火はそれ以前、それこそ自分が高校の修学旅行で最初に訪れた頃からの夏の風物詩であるが、今年はより規模を拡大したと聞いていた。それは噂に違わぬほどに見事なものであったが、これを夏の間は毎日行うというからその意気込みは大きい。

21時半を回ったところで、再び望羊蹄へ。
友人は、店の前のベンチで、うまそうにタバコの火を燻らせていた。
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改めて店主に挨拶を済ませ、そして友人と冷えたビールを酌み交わす。至福の時間だ。
洞爺湖の現状、この店の現状など、いろいろと話を聞かせていただく。どれも簡単には解決出来ない問題であろうが、自分に出来ることと言えば「変わらず訪れ続けること」くらいだろうか。しかし、だからこそせめて、出来ることだけは続けて行きたいと思うのだ。
実家の無い自分にとって、思い入れの深い洞爺湖はある意味故郷も同然。今後ますますの、街と店の発展を祈らずにはいられない。

心地よくビールを飲み干して行くと、疲れもあってさすがに眠くなって来た。明朝、旅立つ前の再訪を約束して店を後にした。
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さすがにこの時間は、街は静まり返っている。
明日から始まるツーリングに期待を膨らませながら、クーラーいらずの涼しい部屋で布団を被った。

【ここまでの走行距離:937km】