内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

2015北海道ツーリング【5】

◆8月10日(月)

イメージ 1
涼しすぎるほどの気温に、5時前に目を覚ます。
ぐっすり眠れたので、頭もすっきり。清々しい朝だ。
K田氏によると、キャンピングカーの車中は意外と暑いらしく、長男くんは汗だくだったとのこと。
いずれにしても、使ってみないと分からないことはあるものだ。そうやって付き合い方を見付けていけばよい。

天気予報は全道的に下り坂であることを知らせていた。
今はまだ薄日が差しているが、どこかで雨にあたるのは間違いないだろう。
こればかりはキャンピングカーと違ってバイクに分が悪い。とりあえずコッヘルで湯を沸かしながら、テントの撤収を始めた。

イメージ 2イメージ 3
自分がコーヒーを入れている間に、K田夫人が残ったご飯で焼きおにぎりを作ってくれていた。
茹でとうきびとあわせて、キャンプ慣れしているK田ファミリーならではの素敵な朝食だ。
自分が子供たちとキャンプにいったとしても、ここまできちんとした朝食は考えていなかった。
少しだけ反省しつつも、ありがたくご相伴にあずかることにする。

昨晩、iPhoneに一本のLINEメッセージが入っていた。

「明日、十勝清水のドライブインで集合しましょう」

バタくんだ。
一足先に渡道しており、この日は旭川郊外でキャンプを張っているとのこと。
事前に今年は道東を目指すと告げておいたため、落ち合う場所を考えてくれていたらしい。
相変わらず気の優しい友だ。

コーヒー片手てツーリングマップルでルートを確認する。
十勝清水のドライブインは、道東へのメインルートでもある国道274号日勝峠を越えた先にある。
晴れていれば遠くに帯広市街を望む、非常に気持ちの良いところだ。
しかし、往々にしてこの峠を境に天気が変わることも多かった。今年は当たりかそれとも外れか…それは行ってのお楽しみだ。

イメージ 4
それほど距離はないので、特に慌てる必要もない。しゃべりながらのんびりとパッキングしていく。
準備が済んだところで、一晩共に過ごしたK田ファミリーに別れを告げる。一足先に出発だ。
名残惜しいが、休み明けにこの後の土産話を聞かせてもらうのを楽しみにしていよう。

月曜日ということもあり、国道5号の交通量は多い。
少し寄りたいところがあったので、朝里ICから札樽道を経由して江別東ICまで駆け抜ける。
ここから真東へ。久しぶりに道道3号で夕張へと向かう。
24年前に初めてバイクで北海道ツーリングに来たときに、夕張へ向かうのに選んだ道だ。
一桁とはいえ、そこはあくまでも道道。交通量も少なく、非常に走りやすい。
道道38号にぶつかったところで、市街地とは逆に右へと曲がる。
清水沢で国道452号に沿って左折し、石勝線の踏切を渡ると、両側を熊笹が生い茂る一本道になる。
5分も走れば、右前方に巨大な人工物が見えてくる。そう、『夕張シューパロダム』だ。

イメージ 5イメージ 6
今年の3月に竣工したばかりの、道内においては最新かつ最大級のダムである。
ちなみに、日本最大のダム湖は、同じく北海道の雨竜第一ダムが湛える『朱鞠内湖』だ。
『夕張シューパロダム』は、建設中だった2年前に一度訪れている。
その時は『大夕張ダム』がまだ稼働しており、そのダムカードと一緒に珍しいシューパロダムの『建設中』のカードを貰ったのだが、改めて完成したことで正規のカードが発行されたというわけだ。
イメージ 7
『大夕張ダム』は新造された『夕張シューパロダム』のわずか155m上流に位置し、今回稼働開始となったことで、新たなダム湖に大夕張ダムごと沈むという。
なんとも想像しがたいスケールのダムが出来たものだ。

山から吹きおろす風が、ポツポツと雨粒を運んでくる。少しだけ先を急ごう。
国道452号を紅葉山へと下り、目指す国道274号を左へ曲がる。ここまでくれば、あとは一本道だ。
しかし、程なく雨脚が強くなってきた。この後は2つの峠越えが待っている。
ここは意地を張らずにカッパを着ておこう。休業中のドライブインの軒先を借りて、テントもビニール袋で包み込んだ。

石勝峠を越えると、そこは日高の街だ。
昨年、一昨年とイベントに顔を出すために、ここ日高を訪れていた。
残念ながら今年は日程が変わってしまったこともあり予定に組み込んではいなかったのだけれど、オフロードバイクに乗る者としてやはり『ヒダカ』というキーワードに特別な思いを馳せる。
あと一か月もすれば、日本全国からエンデューロエンスージャスト達がこの地を目指す。いつかは自分も…と思わずにはいられない。

叩きつけるような本降りの中、日高の街を後にする。
森の中の国道を右へ左へ。登坂車線が現れたことで、日勝峠に差し掛かったことを知る。
この道は東西をつなぐメインルート、大型車の交通量も多く、ペースも速い。
それでも、峠の上りでは地元の速い車をペースメーカーに、気持ちよく大型車をパスしていく。
こういう流れを作れるクルマに出会えたことがラッキーだ。まったくストレスないままに、みるみるうちに標高を稼いでいける。

イメージ 8
長い『日勝トンネル』を抜けると、眼下に広がるのは十勝平野だ。
待ち合わせの『清水ドライブイン』はすぐそこ。予定通り、12時ジャストに到着した。
軒下のベンチでカッパを脱ぎ、バタくんを待つ。
4年前に初めてここで彼と待ち合わせたとき、彼を1時間以上待たせてしまったことがある。
今回は自分が先に到着できたことに安堵した。

イメージ 9
唸るようなエキゾーストを響かせて、1000ccの黒いバイクが近付いてきた。
バタくんと道内で出会うのは、今年で4度目だ。
ここまでのルートこそ違えど、彼もしっかり降られたらしい。
再会を喜びつつ、まずはカッパを脱いでランチタイムにしよう。

イメージ 10
豚丼と並んで、十勝の名物といえば『牛トロ丼』だ。
このドライブインにおける、バタくんと自分の定番メニューである。
たっぷりと盛られた冷凍の牛肉フレークが、口の中でほろほろと溶けていく。
新鮮でさっぱりした牛脂は、まったくしつこさがない。
セットのそばも飾り気はないものの、驚くほどに美味い。感動ものである

どうやら、この先も雨は避けられなさそうだ。
とりあえず帯広まで出て、後の事はそこで考えることに決めた。
まずは自分が前をひく。
イメージ 11
バタくんの荷物は昨年にもまして増えているような気がするが、そこは125馬力の1000cc。楽々とついてくる。
十勝清水の市街で国道38号に合流。ここから帯広市街までは、取締りに注意が必要だ。
『ネズミ捕り』は言わずもがな、白バイも多く出没するエリアだ。
二人で揃いの切符を貰うのは、さすがに興醒めだ。自分はすでに一枚貰っているのだし。

イメージ 12
帯広といえば、やはり『六花亭』だろう。
バタくんと訪れるのも今回で2度目となる。
帯広駅近くの本店では、コーヒーのサービスがあるのだ。ここで食後のデザートといこう。
イメージ 13
本店限定の『さくさくパイ』は、賞味期限3時間(!)という、まさにここでしか食べられない品だ。
カスタードクリームの水分がパイ生地に乗り移る前に食べることで、至福の歯ごたえを味わえる。
普段、あまり甘いものを食べる印象のないバタくんだが、どうやらこれは気に入ってくれているようだ。
そして、帯広本店と札幌本店における期間限定商品として、最近新発売となったスイーツがあった。
イメージ 14
『マルセイアイスサンド』がそれだ。
なんと注文してから作られるということで、帯広に来たからにはこれは食べておきたい。
ここを訪れる観光客の目当てもそれらしく思いのほか待たされたが、期待を超える美味さだった。
通常の『マルセイバターサンド』も好物なのだが、このアイスサンドは口の中に入れた時の儚さも相まって、さらに上を行く感じだ。
これはぜひ、実際に訪れて食べてみてほしい。

コーヒーを飲みながら、東へと地図をめくる。
今はそれほど降っていなかったが、天気予報では道内各所に大雨警報が出ていた。
今夜はキャンプを諦めたほうがよさそうだ。まだ15時頃だったが、距離を稼ぐこともない。
釧路まで120km。今日はこのあたりで止めておこう。

霧雨の中を、再びカッパを着て走り出す。
途中でガスを入れるタイミングで、バタくんと前を交代した。
釧路にいい宿を知っているらしい。さすが、道内を走り倒しているだけのことはある。
安心して前を任せ、一年ぶりに後ろから彼の走りを眺める。
パワフルな4気筒エンジンが唸りを上げると、彼のGPzは身震いするように加速していく。古いキャブレター車ならではの、タメのある加速感だ。
自分のGS-Aのほうが非力なので、スロットルを大きめに捻る。それでも無理についていくことはしない。きっと、彼も自分の走りを心得てくれているはずだ。
年に一度の道内限定のランデヴーだが、この辺りは阿吽の呼吸とでも言おうか。
さっきまでのソロツーリングも気ままで良いが、相棒がいることのなんと心強いことか。

釧路に近づくと、気温が一気に下がる。
路面はフルウェット、カッパを着ていなければ肌寒さに震えるほどだ。
後で知ったのだが、数時間前まで釧路市内で数カ所、道路が冠水するほどの猛烈な大雨が降っていたらしい。
この時間に到着した我々はラッキーだったとしか言いようがない。

イメージ 15
今夜は、バタくんの釧路での定宿、『民宿 鳥取』へ泊まる。
釧路なのに鳥取とは如何なるものか、と疑問に思うが、驚くべきはその値段。
素泊まりとはいえ、一泊2,600円なのだ。これでも消費増税に伴い100円値上げした、らしい。
部屋の広さはそれなりだが、それゆえに一人一部屋あてがわれた。喫煙者であるバタくんには、そのほうが気遣いがなくて互いにいいだろう。

イメージ 16イメージ 17
夕飯は、歩いて国道沿いのラーメン屋に行った。
今年も再会を祝って、ジョッキで乾杯。
宿に戻ってサッポロクラシックで飲み直し、明日の天気を祈りながらほどほどに部屋へと戻った。

【今日の走行距離:379.1km】
(つづく)