内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

ありがとう、日高【その6】

915日(土)DAY 1(後編)
 
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TC5“宮川TCまでの持ち時間は20分。
ここから、しばらく国道237号を富良野方面に向かって走ります。
途中、国道274号との交差点で信号待ち。
 
交差点の角にある、店の外にテーブルセットを備えた『セコマ』は、最初にツーリングで北海道を訪れたハタチの時から、何度立ち寄ったか分かりません。
その昔、夏の暑さに負けてこのセコマ飛び込んだところ、当時この店にはまだエアコンが付いていなかった、という思い出も今では笑い話です。
 
日高峠へ向かう国道を右へ折れ、再び林道へ。
心なしか少し砂利が深いようで、リアを振り出しまくり。
疲れてもきているのでしょう、少しスロットルは控えめに行くことにします。
下りきると、またしても川渡りが…。
少しばかり自信がついてもきましたが、やはり油断は禁物です。
ここも無難にクリアして、TC到着。
意外と時間が余ってましたね。助かりました。
 
次のTC6“日高6TCまでは、持ち時間13分。
しかし、ここでついに誤算が生じます。
TC6の手前にはGAS2のピットがあり、自分達のチームはそこにガスをデポしていました。
 
しかし、そこに至るルートがなかなかの曲者。
国道を避けるために、一段低いところにある幅1mほどの細い脇道を通るんですが、その真横にはコンクリート製のU字溝”が深々と口をあけています。
これがまたお誂え向きなほどに、バイクがすっぽり収まりそうな深さ。
万が一にも落ちようものなら、一人で引き上げるのは恐らく不可能かと。
さらに、そのU字溝を横切るように、鉄製の道板が渡された“橋”が2カ所。
しかも、アプローチが斜め進入となる上に、メチャクチャ滑る!。
こんなところでタイヤを滑らせ、U字溝に落ちようものなら目も当てられません。
そしてこのエリアの出口には、ご丁寧に濡れた岩盤をヒルクライムという、イヤらしさ満点のレイアウトになっています。
 
時間はないけど、絶対に落としたくない…
気持ちは焦りますが、安全策を取って“道板橋”は敢えて押しました。
 
GAS2のピットにたどり着くと、一足先に鈴木さんが給油準備中。
給油の際、地面にガスをこぼしてしまうのを防ぐため、環境保護マット”の使用が義務付けられていますが、我々はチームで一枚しか用意しておらず。
そのため、すぐに給油できるようガス缶の準備を済ませ、鈴木さんの給油が終わるのを待ちます。
その時、鈴木さんから「内田さーん、あと何分?」と聞かれて初めて、時計を見て唖然。
 
「あ…あと2分っす」
 
それを聞いた鈴木さん、「やべー!」と途中で給油を切り上げ、急いでこの先にあるTCへと飛び出していきました。
同じ組ですから、「やべー!」のは自分も一緒。
しかし、残り半分のコースを無給油で乗り切れる保証はどこにもありません。
 
「なるほど、これが“遅着”ってことか」
 
焦りはあるものの、まずは開き直って給油。
その後、急いでTC6へ到着した時には、自分の指定時間から1分”が過ぎていました。
これが“ペナルティ”として、加算されることになります。
 
ここまで“オンタイム”で来ていただけに、悔しさが無いといえばウソになります。
しかし、JEC初挑戦でルールも全てを理解しているわけでもなく、ここに至るまで“オンタイム”で来られるとは、正直“出来過ぎ”だと思っていた自分です。
「これも“経験”かな…」
カードホルダーからタイムシートを取り出し、赤ペンで以後のTC到着時間に“1分”を加えました。
 
林道を走り繋いで目指すTC7“ミシマTCまでは、持ち時間39分。
この林道が意外と長く、疲れを誘います。
しかし、このルート中には4つめのテスト“ミシマETがあるため、不測の事態を考えるとそこそこ先を急いでおきたいところ。
過去の交通事故の際、今でも右股関節にはボルトとプレートがインストールされているためか、ここに来て痛みが出てきました。
さらに、無意識に右足をかばっていたのでしょう、左のふくらはぎにも時々攣るような症状が。
キャメルバッグの水分を意識して多めに摂りながら、テクニカルなテストに備えてシッティングで体力を温存します。
 
川沿いに下っていく林道は、木々の陰になっているのでとても涼しく、身体全体で浴びる風が本当に心地よい。
引き締まった路面からのインフォメーションも良く、フロントのミシュランタイヤがいい仕事をしてくれています。
「こういうダートがいつまでも続いてくれたら良いのに…」
なんて思っていたんですが、
 
ホントにいつまでたっても舗装路に出ないんですけど!
 
次のテストは昨日下見しており、アクセスを理解しているだけに、ダートが続いているうちはテストはまだまだ先。
ハンドルバーにつけた時計の画面が日陰で見えず、持ち時間の残りも判断がつきません。
ガマンして着実に距離を刻むしかなさそうです。
 
ようやくダートが終わり、時間を確認すると、まだあと20分弱残っていて一安心。
もっと林道が長かったようにも感じられましたが、意外とペースが良かったということでしょうかね。
そのまま“ミシマETのスタートゲートに飛び込みます。
 
じっくり下見はしたものの、どこまで覚えているかはアヤシイもの。
とにかく無理なラインは攻めないように心掛けて、コースの先を見てスムーズなライン取りを意識します。
土手の大きなバンクもタイトに使うのではなく、むしろ少し駆け上る感じにして、上から先を見通すようにします。
結果、車体が起きた状態で丸太をクリアできるシチュエーションが多く、ここまでミスらしいミスは無し。
そして竹藪の路面にいい感じでフロントタイヤが突き刺さります。
これはモトクロスタイヤをチョイスした効果があったというもの。これは気持ちいい!
 
最初の川渡り。
ここは川幅が狭く、速い流れに加えてそこそこ深いため、車体を立てて真っ直ぐにスピードを乗せてアプローチ。
このくらいスピードがのっていれば、万が一川底の大きな石に弾かれて転んだとしても、勢いでバイクだけは対岸まで行けるはず!という、開き直りにも似た割り切りプランだったりして。
昨日の下見の時は、みんなであれこれ警戒していたんですが、特に問題なくクリア。
 
中洲では、フカフカのサンドにフロントを取られないように注意。
先程の“貯木場CTでもそうでしたが、疲れた腕にはこれが堪えます。
ガマンガマン。
 
そして、帰りの川渡りに差し掛かると、渡り切ったところに止まっている鈴木さんの姿が。
上りで転んだのかな?と思いつつも、油断すれば明日は我が身。
無難に渡河をクリアし、鈴木さんの横をかすめて土手を上り…
 
そして、上りきったところで安心して転ぶという、、、(>_<)
 
ああ、ここまでノーミスだったのに…。(速いかどうかは別)
急いでバイクを起こしてリスタート。
コースに横たわる一番大きな丸太だけは迂回しちゃいましたが、無事にフィニッシュです。
 
自分的には、ほぼほぼスムーズにクリアできていたのでは、と。
それだけに、「あそこの転倒、もったいなかったなー」という思いが沸々。
明日のDAY2も今日と同じコースとなります。
「次の時は、今より上手く走ってやろう」
そんな思いを抱くことも、“オンタイム・エンデューロってことなんでしょうね。
 
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テストの出口で鈴木さんを待って、その先にあるTC7に到着。
どうやら先程のテストで派手に転んだらしく、シフトペダルが内側に曲がってしまった様子。
手持ちの工具を使い、力技でペダルを外に曲げ直します。
何とか操作できるようになって一安心。
ここまでオンタイムで競技を進めている鈴木さんは、自分よりも1分速いスタートとなるため、慌ててヘルメットを被りひと足先にスタートしていきました。
 
“プレフィニッシュ”を兼ねる、次のTC8でいよいよ最後。
ひたすら林道を走って、スキー場へと帰ります。
持ち時間は67分と、これまたお腹一杯になるほどの林道が待っているはず。
ルートの最後には、今日2度目の“ゲレンデCTがあるので、出来れば今朝のリベンジと行きたいところですね。
 
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カフカの砂利のタイトターンで標高を稼いでいく林道は、なかなかに気の抜けないシチュエーションが続きます。
片側がスパッと切れ落ちているところも多く、もちろんガードレールなど皆無。
ここまできて調子に乗ってコースアウト、なんて目も当てられません。
途切れそうになる集中力をスタンディングで無理やり奮い立たせ、路面を睨み付けます。
追い付いてきたライダーには迷わず先を譲り、あくまでも自分のペースをキープ。
 
淡々と…そう淡々と、確実に前へ。
 
林道を外れてウッズの丘を越えたら、目の前には見覚えのある一面のグラストラックが。
昨日テストトラックとして走った“パリティ”まで帰ってきました。
ゲレンデはもうすぐそこです。
 
本日二度目の“ゲレンデCT
DAY1の最後ですから、もう出し切っちゃうしか!
朝と比べて大幅に気温が上がっているため、泥濘も乾いてきているはず…。
なので、最初から攻めます!攻めていきます!!
 
適度に掘り返されたグラストラックは、グリップも抜群。
2スト250のパワーでもしっかり路面を噛んでくれています。
一つ目の作業道を中腹まで駆け上がり、下って右のターンで再び上りへ。
目の前には、コース幅いっぱいに待ち構える“ぬかるんだワダチ”が…。
4速へシフトアップ…いや、ここは3速開け開けでフロント浮かし気味で行けるだろ!」
と、ほぼ全開でワダチに進入。
そして次の瞬間、

チュドーン…

前方に投げ出されて、空を飛ぶ自分…そして落ちたところは泥濘の中…。
「えっ?何?何が起こったの??」
どこにもぶつからずに、あまりにも見事にゲレンデを“転げ上った”(そんな言い回し、聞いたことない)ため、幸い身体にダメージは無さそう。
バイクに駆け寄り、路面をチェックすると…
ワダチの中に大きな石が埋まってるじゃないですか。
これがフロントタイヤにヒットして、いきなり減速したですか。そうですか。
 
しかし、まだテストは終わっていない!(今朝も書いた)
慌てて起こして、すぐにリスタート。(これも書いた)
残りの区間はそれなりにコンディションもよく、無事フィニッシュ。
いやー、またしてもやっちまいましたね。(ToT)
 
それにしても、フロントだけでもムース入れててヨカッタ…。
あの速度でチューブだったら、リム打ちでパンクしててもおかしくないですもん。
難波先生、ありがとうございます!
 
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最後の最後にまた泥だらけになりながら、TC8“プレフィニッシュ”に到着。
ようやく鈴木さんに追い付き、しばし時間調整中に雑談。
こういう時間は“オンタイム”ならではですね。
もちろん、持ち時間内に帰ってこられていればですけど。
 
ここでも、1分先行してプレフィニッシュを受ける鈴木さんを見送ります。
“オンタイムエンデューロ”では、一度付いてしまったペナルティは取り返すことができません。
1分遅着”したからといって、次のTCで“1分早着”すれば取り戻せる、ということはないのです。まあ、仕方ないですよね。
でも、無事に帰ってこられたんだから、とりあえずそれでヨシ。
 
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“プレフィニッシュ”を受けてピットへ戻ると、難波さんが待っていてくれました。
ここで与えられる“ワーキングタイム”15分。
マットの上にバイクを止めてスタンドを掛けると、自分のガス缶を手にした難波さんが即座に給油開始。
基本的にはライダー本人しか手が出せないのですが、給油と工具の手渡しだけはサポートの手を借りてもよいことになっています。
それにしても、難波さんに手際の良さに惚れ惚れ。さすがは百戦錬磨の“IBライダー”です。
 
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残りの時間で、出来ることをやっておきます。
まずは用意しておいたエアクリーナーエレメントを交換。
次に前後タイヤと空気圧をチェック。最後にラジエターキャップを開けて、クーラントの量を確認。
今思えば、この時に「チェーンルブくらい塗布しておけばよかったかな」と思いましたが、
実は自宅に忘れてきた自分です。(てへ)
あとは、各部可動部分のチェックくらいしか出来ることはなかったりします
あれだけ何度も転がしてしまったのに、ラジエターすら歪んでいないという…
エラいぞ、KTM!。
 
“最終TCは早着OK!”とのことで、愛機を押してパルクフェルメの所定の場所へ。
これで、“DAY1”完走です!
いやー、長かった。
そうはいっても、時間はまだ14時を回ったばかり。
朝が早かったのもありますが、それでもスタートからゴールまでのレースタイム5時間あったわけです。
 
ちなみに、DAY2も全く同じコースで行われることが分かっているので、今日と同じことをもう一度やらなければいけません。
でも、不思議なもので、今朝TC1へ向かう途中で早々に抱いていた「ヤバいところへ来ちゃった」感は、この時点ではすでに消えていました。
競技を進めていくうちに、身体でルールを理解してきたこともあるのだと思います。
とにかく初日を無事に終え、ここまで来たら明日も完走してやろう、という思いでいっぱいな自分です。
 
ピットへ戻ると、ちょうどNAの西川さんが戻ってきたところ。
NA以上の上位クラスは、ショートループ(と言っても25kmあるんですけど)の“2周目”が用意されており、そのためにゴールタイムがNBの我々より遅いライダーもいたりします。
 
さすがの西川さんもお疲れの様子。
ですが、我らが“難波カントク”は“愛のムチ”を振るうことを忘れていませんでした。
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「ほら西川さん!リアホイール外して持ってきて!」
実は、交換するスペアタイヤを用意しているわけではなく、タイヤの回転方向を入れ替えるために一度タイヤを外すのです。
そんなことをせずとも、西川さんならこのままで明日も問題なく完走できるはず。
しかし、難波さん曰く、それを敢えてやらせる理由は、
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エンデューロなんだから、そのほうが“らしい”じゃん!」(うろ覚えです。間違ってたらスミマセン)
その昔、エンデューロ全日本選手権格式になった頃、最後のワークタイムでタイヤ交換をすると、“ボーナスタイム”が貰えたこともありました。
今ではそういうのは無くなったはずですが、
「疲れ切った身体に最後の気力を振り絞り、明日に備えてタイヤを交換する」
というのは、やはりエンデューロ“見せ場”の一つであり、それが“醍醐味”なのでしょう。
元来タイヤ交換が苦手な自分にとっては、完全に『無理ゲー』な仕打ちに過ぎませんが、上を目指す(かと思われる)西川さんにとっては『越えるべきタスク』であると、難波さんは考えているのだと思います。
 
でも西川さん、メッチャしんどそうでしたけどね!(^_^);
 
実はピットでは、もう一つ心配事が。
W”クラスの美和子さんが帰って来ないのです。
指定時間からするととっくに戻ってきているはずなので、ケガなどしていなければ良いのですが…。
と思っていたら、美和子さん、何故か歩いて戻ってきました。
話によると、TC7の先でエンジンが止まってしまったとのこと。
キックしても圧縮が無いので、どうにもエンジンが掛からず、スタッフの車に乗せてもらって帰ってきたんだとか。
トラブルの原因を皆であれこれ推察しますが、いずれにしてもマシンを回収してみないと何とも言えません。
TCが解除になるのを待って、難波さんがトランスポーターで回収に向かいます。
 
その間、残された我々はブリーフィング。
自分がペナルティを背負う原因ともなったGAS2での給油ですが、実は西川さんも同じ理由で、ほとんど給油出来ずにギリギリでTCに飛び込んだとのこと。
ホントに、良くガスがここまで持ったものです。
そのため、明日の給油を時間の余裕が見込めるGAS1で行うことに決定。
西川さん、滝沢さんと協力して、“GAS2”にデポしてある仲間のガス缶を“GAS1”へと移動させました。
 
再度ピットへ戻ると、ほどなくして難波さんのハイエースが美和子さんのマシンを積んで戻ってきました。
車から降ろすやいなや、ハスクバーナのワークスピットから
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「こっちへバイク持っておいで!」
と声が掛かります。
難波夫妻ならではの人脈で、メーカーのメカニックが集結。
あっという間にエンジンが開けられました。
トラブルの主因は、「シリンダーヘッド燃焼室の歪みによる圧縮抜け」
しかし、大元の原因までは、この時点では分かりませんでした。
 
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いずれにしても、重要なのは「レースに戻れるかどうか」
今日はリタイヤになったとしても、再車検をクリアすればDAY2のスタートラインに並ぶことが出来ます。
最後まで諦めずに部品の調達を模索しましたが、2015年モデルである美和子さんのマシンのものはすぐには入手ができず。
残念ながら、美和子さんのHTDEはここで幕を下ろすことになりました。
 
一番悔しいのは、もちろん美和子さん。
でも、最後まで諦めることなく、あらゆる手を尽くした誰もが、同じ悔しさを共有したのだと思います。
不謹慎かもしれませんが、自分は「この場に立ち会えて、いいものを見せていただいた」という思いでいっぱいです。
美和子さん、お疲れ様でした。
 
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温泉で疲れを癒し、バンガローへと戻ります。
今夜は小樽で買っておいたジンギスカン
この時のために、内地からわざわざMyジン鍋”を持参した自分です。
やはり“気分”は大事ですからね。
自宅でも定期的に“ジン鍋”を囲む我が家ですが、やはり“この場所”でいただくと、ひと味もふた味も違うように思えるのは、一緒に味わうサッポロクラシックのせいでしょうかね。
 
今日もビールで身体を冷やし、焚き火で暖を取るというマッチポンプな夜が更けていきます。
残された“DAY2”完走を祈る思いで星空を見上げながら、ビールを飲み干して暖かい寝袋のもとへ。
明日も頑張ります!
 
(つづく)