◆9月14日(金)
船内放送に叩き起こされ、眠い目をこすりながら車輛甲板に集まる“日高行き”の面々。
定刻通りに小樽着岸ののち、順次ボーディングブリッジから北の大地へと飛び出していきます。
天狗山の向こうの空が夜明けを告げる小樽の朝。
全開の窓から吹き込む北国の空気は、内地のそれとは違うひんやりとした秋の風でした。
バイクじゃないけれど、、、
「今年も来たよ、北海道!」
HTDE参戦のために、この夏の北海道ツーリングは諦めていたのですから、感慨もひとしお。
やはり年に一度は来ておかないとですねー。
小樽に上陸するやいなや、トランスポーターの集団は一斉に運河のはずれにある市場を目指します。
それがここ。
毎年、日高エントラントのFacebookを羨ましい想いで眺めていた憧れの場所です。
みんなのお目当ては、市場の一角にある『のんのん』という食事処。
早朝からやっているところは小樽市内でも少ないらしく、それゆえ毎年上陸直後になだれ込むのだとか。
嗚呼、なんと罪作りな朝食なのかと!
“世界一の朝食”というキャッチフレーズで知られる、『bills』のリコッタパンケーキが霞んで見えますよ。マジで。
ここでも、
「新潟まで高速使わずに節約したから、このくらい良いよね!」
と自分に言い聞かせての『小樽丼』をペロリと完食です。
お腹が満たされたところで、取り急ぎ当面の食材を調達。
地震の影響は少なからずあるようで、節電モードはもちろんのこと、2Lのペットボトルは“お一人さま一本まで”。
味付きのジン肉はゲットできたものの、なぜか“もやし”はナシ。
それでも、きちんと営業してくれていることに感謝なのです。
今日はレース前日。
現地でもやることが目白押しなので、小樽からは高速道路で夕張までワープ。
平日の朝ですからね。札樽道も我先にと仕事へ向かう車でいっぱいです。
夕張のICで高速を降り、紅葉山の交差点にある『セコマ(セイコーマート)』にピットイン。
無事に“もやし”が調達できました!
エライぞ、セコマ!
つい『夕張メロンアイス』に手が伸びてしまう、先生と自分。ああ、シアワセ。
そして、会場に到着!
ここも毎年ツーリングで訪れている場所なので、「帰ってきた!」という想いでいっぱいです。
早速テントを張り、バイクと機材を下し、ピットを設営します。
こういう必要な機材を一つずつ用意していったら、「準備に2年かかった」というわけですね。
一通り準備ができたら、みんなでコースの下見に行きます。
ちなみに、こちらが今回のコース図。
クラスによって若干異なりますが、“国内B級”の自分は121kmのコースを1日1周。
それを2日間繰り返すことになります。
そのため、タイムアタックが求められる『テスト』については、なるべく下見をしておくべきなのだとか。
今回の『テスト』は4箇所であり、最初の『ゲレンデCT(クロステスト)』はスタート直後とゴール前の一日2回行われるため、一日で5つのテストを走ることになります。
自分のデリカに乗り合い、まずは一番遠い『ミシマET(エンデューロテスト)』へ。
今回、久しぶりに使われるテストらしく、誰もが「下見は必須!」と警戒しています。
そもそも“エンデューロテスト”について、他の会場と比較するモノサシのない自分は、「こんなもんなんだー」という新鮮な印象。
伐採された竹藪の中を抜けると、一つ目の川渡りが。
川幅はそれほどでもないのですが、それだけに流れが速く、みなライン取りを慎重に検討しています。
ここで川底に沈む大きな石など踏んで、万が一転倒→水没なんてしてしまったら、とんでもありません。
下見に長靴を履いていく理由に納得。
そのあともサンド質の路面を行ったり来たりして、2回目の川渡りで竹藪に戻ってきます。
ここ『ミシマET』は全長約2km。
みんなで「ここは行ける」「この丸太がイヤ」など、あーでもないこーでもないと話しながらじっくりと歩いて、たっぷり30分以上。
いやー、なかなかに走りごたえがありそうです。
続いて、『貯木場CT(クロステスト)』。
昨年はXT(エクストリームテスト)として使用されたようですが、今年はよりスピードを求められる設定になっていると思われます。
それにしても、何ともイヤらしいセクションだらけです。
駆け上がりの斜面の手前が掘ってあったり、丸太が並んでたり…これが無ければ、少しは飛ぼうって気にもなるんでしょうけどね。
下りも逆にキレイにエッジが出ているもんで、中途半端な速度でリアが跳ね上げられたらそれこそ前転コース…『MXライダー崩れ』の自分の“中途半端な自信とヤル気”を、ことごとく削いでくれます。
キレイに流木が積まれたロングテーブルトップ。
上りも下りも台の上もすべてが流木という、もはや不安定要素しかないです。
ここは前半が高速林道、後半が川渡りを含むテクニカルセクションと聞いています。
高速林道…苦手なんですよねー。なんで、みんなあんなに飛ばせるんだろう?
パドックへ戻ると、北の大地の爽やかな風に抱かれて、難波先生爆睡中。www
メーカー系のワークスとショップチームも続々と到着し、すっかりパドックが賑やかに。
この整然として雰囲気は、さすが『全日本選手権』と言ったところでしょうか。
少し遅めのランチを済ませたら、自分(#430)と並びゼッケンで同じクラスを走る、#429鈴木さん(鈴木オート店主)と受付に向かいます。
このHTDEは一部に一般公道を使用するため、競技車両にはナンバープレートが必要。
そのため、受付においては、免許証・登録証・自賠責保険証などの必要書類が厳格にチェックされます。
受付横では、今回の地震被害に対する募金が行われていました。
お礼としてもらえるステッカー、今回のためにわざわざ作り起こしたのでしょう。
それもたった一週間で。
大小2種類用意されていたので、気持ちだけでもと2回募金させてもらったのはいうまでもありません。
そして、車検前に、マシンの最終チェック。
グリップの良いグラストラックを、初体験のムース(フロントのみ)の感触を確かめるように走ります。
今回使用する『レッドムース(エンデューロタイプ)』は、空気圧にすると0.8相当になるとのことで、フロントにチョイスした『ミシュランSTARCROSS5(Medium)』と合わせて路面をがっちりとグリップ!
一般的にチューブよりも重いムースですが、それほど違和感もなく、狙ったラインをトレースしてくれます。(レース本番になったら、自分がちゃんとコントロールできるか知りませんけど)
そのためブロックハイトは13mmと、普段のレースで使用しているタイヤよりかなり控えめです。
しかし、アドバイスにより空気圧を0.6にしたところ、抜群のグリップを発揮。
それにしても、なんというロケーション!
この場所を自分のマシンで走りたくて、ずっと準備を進めてきたんですよね。
他に誰もいないので、エンジンを止めるとそこはもう風の音だけ。
それだけで少しだけ目頭が熱くなるような感情が押し寄せる、感動の瞬間ですね。
ああ、来てよかった!
さて、調子に乗ってテストでマシンを転がす前に、ほどほどのところでパドックへ。
余裕をもって、車検に臨みます。
その後、『パルクフェルメ』と呼ばれる車両保管所にマシンを入れます。
これ以降は、翌日のスタート前まで、一切マシンに触れることはできません。
また明日な、相棒!
太陽が大きく傾いてきた頃に、最後に『ゲレンデCT』を下見します。
ここはメイン会場となる、『日高国際スキー場』の斜面に設定されたテストで、スタート直後とゴール前と一日2回使用することになります。
グラストラックのため、朝イチのテストでは夜露に光る路面でスリップダウンしないように注意。
それ以外にも、何やらたっぷりと水を含んだ箇所が数か所。
ここは絶対に掘れるんだろうな…という危惧は、2日間ずっとついて回ることになるとは、この時は知る由もありませんでした。
それにしても、この金色に輝く景色の美しさよ!
もうね、ため息しか出ないですよ、ホント。
明日からのレースのことなんて、忘れてしまいそうな自分です。(ヲイ)
早めに温泉につかり、『ひだか高原荘』のロビーで待っていると、ほどなく開会式が始まりました。
HTDE競技監督である、『Big Tank Magazine』の春木さんがご挨拶。
この人が、自分をここに呼び寄せた張本人と言っても過言ではありません。
先日アサマで行われた『RIDE AFRICATWIN』でも散々お世話になりました。
本当は地震の災害復旧のために忙しい時期であるにも関わらず、こうやって地域を挙げて我々を迎えてくれました。
もはや“感謝”という言葉だけでは言い表せないほど。
今この瞬間も、そしてこれからも、「自分たちはこの地域のために、何ができるだろう…」ということを、常に考え続けていかなければいけない。
そういう想いを新たにした瞬間でもあります。
今年もカナダから3名のライダーがエントリー。
自分の記憶が確かなら、“国内A級クラス”にエントリーのジャーナリスト『ローレンス・ハッキング』氏は、昨夏開催された『RIDE AFRICATWIN INTERNATIONAL』のゴール地点でお会いしているはず。
今夜のメニューは、昨日沼田で買い求めておいた、永井食堂の『もつっ子』!
レトルトのご飯と一緒に温めるだけ!というお手軽調理ですが、日が落ちて一気に気温が下がったこともあり、極上の味わい!
これがまた、ビールに合うんですよねー。
食事は外のテーブルでとるため、寒さに備えて念のために持ってきた『焚火台』と『まき』も、しっかりと役に立ったようです。
今回は車で来たために、「今、北海道に来ているんだよなぁ」という実感が今一つ薄かったのですが、毎年欠かさず訪れているこの場所で見上げる星空は、やはり日高のそれ。
まだレースモードになりきれていない自分ですが、明日からの本番をどこか心待ちにしつつ、夜は更けていきます。
(つづく)