内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

HINO HARD ENDURO、行ってみた【その2】

週間天気はずっと“晴れ”予報だったはずなのに、

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なぜ雨は止まないのか…と。
しかも、前日辺りから降り続けてるじゃないですか。なんだかなー。

スタッフ側として散々マディレースには立ち会ってますが、自ら出走するのは超久しぶりかも。
パドックの至る所でスタックするトランポを見ると、
「これはエライことになるに違いない…」
という悪い予感しかしません。
でも、

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「“走らない”という選択肢はないやろ」(by鶴瓶
ということで、

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未練がましく着古した“カッパ”で自己防衛に努めることにします。

コース自体を知らないのですが、見渡す範囲に“ガレ場”は無し。
そして降り続く雨…ということは、
「実はリアの『BS X20』は、“当たり”なんじゃね?」
とちょっぴりガッツポーズ。
恐らくはドライであれば “ガミータイヤ一択”なんでしょうが、この土質であればマディ用のMXタイヤが機能するはず!
「たまたま家にあったから」ではありますが、「不幸中の幸い」は素直に喜ぶことにします。

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タイヤのエアを落とす自分に、N川さんが声を掛けます。
N川さん(以下、N):「内田さん、エアいくつにしました?」
店主(以下、店):「さすがに今回は0.5まで落としましたよー」
N:「えっ?0.5?(タイヤを手で押して)硬っ!こんなんじゃ帰ってこられませんよ!」
店:「えっ、じゃあ0.4…いや、0.3くらい?」
N:「このタイヤ自体が硬いですからね。むしろ“大気圧”で十分ですよ」
店:「大気圧って“ゼロ”ってこと!?いやいや、パンクしちゃうでしょ!
N:「ビードストッパーはいくつ入ってます?」
店:「一応、2個入れてますけど…」
N:「それならたとえパンクしても帰って来られますよ。イイですね?エアは全部抜いてくださいよ!」
店:「じゃあ“フロント”は?」
N:「そっちは0.4くらいでも良いんじゃないですかー」
店:「は…はい」

自分にとっての今までのセオリーは

「ハードエンデューロでは通用しない」

ということですね。
経験者のアドバイスは“金言”。
半信半疑ではありますが、ここは素直に従うべきでしょう。

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慌ただしく準備を済ませ、なんとかウェイティング時刻に間に合いました。
降り続く雨の中でも、セルボタン一発で愛機はお目覚め。
「ご機嫌だぜ!」(バイクだけ。ライダーはかなりブルーです)

自分が出走する『ミディアムクラス』のエントリーは94台。
くじ引きの結果、スタート列は“5列目”でした。
降り続く雨の中、スタートフラッグが降られました。
1列目から順番に1コーナーの先に消えていきます。

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『ミディアムクラス』のコース図はこんな感じ。
このフィールド自体を知らない自分にとっては、どこがどうなっているのか全く分かりません。

ようやく5列目がスタート。
“MXライダー崩れ”っぽく、1コーナーだけはホールショットでクリア。
ちょっぴりご満悦です。
1コーナー先のテーブルトップ登りでスタックしているバイクが2台いましたが、“ご満悦な気分”のまま無難にパス。
『竹やぶ』を抜けると、ルートは我々をいよいよ山の中へといざないます。

坂を下り切った自分が目にしたものは、行儀よく“二列渋滞”となってヒルクライムに取り付いたバイクの車列。
『この坂で投げないでヒルと銘打たれてはいましたが、すでに投げるどころか前に進んでもいません。
「マジか…」
それでも並んでいれば、イゴイゴと一台ずつ掃けていきます。
なるべくワダチを掘らないように、少しずつではありますが自分もじわじわと前へ前へ。

後方からワダチを無視してチャレンジしてくるライダーもいましたが、ぬかるんだ路面が敢え無く排除。
確かに、そうやってでもアタックしていかないと、前のライダーは抜けないですよね。分かります。
でも、出来ません。出来る気がしません。なので、やりません。

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ワダチの中の一本道とはいえ、一筋縄ではいきません。
他のライダーが思い切り掘った穴にフロントタイヤを落としては失速し、リアタイヤを落としては空転させ、そのたびに少し下がってフロントを浮かせ気味にして再アタック。
穴だけでなく、 “木の根っこ”にも当たるたびに同じことを繰り返し、その都度キャメルパックのドリンクを飲んで深呼吸して気持ちを入れ直す…。

「ハードエンデューロって、やっぱりツライなぁ…」
と遠い目をする自分なのでした。

ようやく山を越えてパドック側に降りていくと、チームのみんなが待っていてくれるのが見えました。
朝見た時から、イヤな予感しかなかった『4段ヒルです。
この路面じゃリアが空転して登れないんじゃね?と思ったところに、神とはいるものです。
「ウッチー!コースカットされたから、2段目まで登ったらOKだよ!」
嗚呼、貴女のその言葉にどれだけ勇気を貰ったことか…。全米が泣いた

最悪、投げてもバイクが上がればOK!
中央のラインは2段目の登りで路面がえぐられており、最後の丸太でフロントタイヤが跳ね上げられてバランスを崩すライダー多数…。
これは傾斜が急でも路面のきれいな左のラインだろ!、と覚悟を決めてスロットルオン。

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見事、一発でクリア!
…と思いきや、勢い余って3段目を途中まで登ってしまい、バイクが横倒しになるという…いや、上がれれば良いんです!

仲間に別れを告げて、再び山の中へ。
すでに自分がどこを走っているかなんて分かりません。
『ガレ尾根』だか『DFヒルだかでもスタックを繰り返し、ブリーザーホースから派手に水蒸気を噴き出す愛機はもはやオーバーヒート寸前。
ここからは小まめにエンジンを止めるようにして、なんとか最後まで乗り切る作戦です。

移動路の先にライダーとギャラリーが溜まっているのが見えました。
直登のヒルクライム『オールマウンテン』です。
コースオフィシャルとして現場にいたのは、20年来お付き合いさせていただいてるIさん。
「ユーヤ!一発で上がれよ!」
と、思いっきり気合を入れてくれます。
ここはビシッと決めたいところ。
コース幅いっぱいまで下がって助走を確保し、2速全開!行ったれやー!
「おぉ、登った…!」
やるじゃん、オレ。ギャラリーも拍手と歓声で迎えてくれました。
正直、メチャクチャ嬉しかった!
自分の中で、今日一番のハイライトでしたね。

ガレた枯れ沢を下り、そして上り、『ベーシックヒルのセクションをイゴイゴしていたところで、オフィシャルから声が掛かりました。
「2時間経過、ここでタイムアウトです。スタート地点まで戻ってください」
セクション数的にようやく半分をクリアしたところでしたが、さすがに“日野カン”は甘くなかったですね。
それにしても、“スタート地点までの戻り方”が分からないんですけど…

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「ココハ、ドコデスカ?」

『ベーシックヒル』を登り切ると、先にクリアしたO野さんが待っていてくれました。
お互いに戻り方が分からず途方にくれていたんですが、コースを知る人を見つけて連れて帰ってもらえることに。

ルートを走りながら、ぼんやりと考えました。
「何故、ハードエンデューロがライダーを魅了するのか」と。

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確かに、8月に北海道で観たハードエンデューロ『HIDAKA ROCKS』は、友人が出ていることもあって観ていても面白かったです。
でもあの時は、「バイク壊しちゃいそうだし、やっぱり自分は出なくて良いかな」と再確認したに過ぎませんでした。
しかし、今回“酒の勢い”(笑)でエントリーしてみて、
「やはりモータースポーツはやってみなくちゃ分からない」
と、今更ながら改めて思った次第です。

ツライことも多かったですが、それでも登れた時の達成感。
声を掛けてくれ、そして登り切った時に一緒に喜んでくれるギャラリー。
そして、完走できなかった時の悔しさ…。

ミディアムクラスのライダーが何言ってんだ、と思われるでしょうが、少しだけハードエンデューロの魅力に触れられたような気がして、今では
「出て良かったな」
と思っていたりして。

自分のパドックへと戻る途中で、『FUNAI RACING』のワカモノたちと会いました。
「ハードエンデューロ、どうでした?」
とニヤニヤする彼らに、
「いやー、二度目は無いかなー」
とこれまたニヤニヤして返す自分がいます。
「じゃあ、また次回リベンジですね!」
と焚きつける彼らに心の中で「バカヤロ」と呟きながら、

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「やられっぱなしじゃ終われないよな…」
と思い始めた、晩秋の冷雨降る群馬での一日でした。
(おわり)