“新型”について想うこと
愛機『CRF1000L AFRICATWIN』の次世代モデルが、現在“東京ビッグサイト”で開催されている『TOKYO MOTOR SHOW』(以下、TMS)で正式発表されましたね。
EURO5の規制を見据えて、ストロークアップにより排気量が上がったことで、モデルネームは『CRF1100L AFRICATWIN』となりました。
排気量アップにも拘わらず、車体が軽量化されるというから、開発陣の本気度は並大抵のものではなかったはず。
型式名は『SD10』。自分の“2016年モデル”の『SD04』からすると、隔世の感すら覚えるほどの進化っぷりには、ちょっぴり嫉妬してしまうのもやむを得ないところです。
今回のアップデートは全方位に渡って手が入りましたが、大きなところでは“さらなる電脳化”と“車体の大幅な進化”がトピックと言えるでしょう。
“電脳化”のほうは、『IMU』採用による車体制御の緻密化と、『Apple CarPlay』の採用による利便性の大幅向上。
ツーリングライダーである自分としては、やはり『クルーズコントロール』の採用が非常に羨ましく思えますね。
“車体の進化”のほうは、完全新設計となる『フレーム』による、剛性バランスの見直しと軽量化が図られています。
また、『ADVENTURE SPORTS』モデルには、SHOWA製の『電子制御サスペンション(EERA)』搭載仕様が用意されており、こちらは恐らくホンダ車初採用!(違ってたらゴメンナサイ)
そのような新技術が“AFRICATWIN”から投入されるなんて、ちょっと誇らしく思えたりします。
そして、何をおいても一番喜ぶべきは、
「ホンダが“AFRICATWIN”の開発を継続させてくれた」
ということに尽きます。
2002年、惜しまれながらラインアップから消えた『XRV750(RD07)』。
そこから“空白の14年”を経て再び我々の前に登場した『CRF1000L』によって、“AFRICATWIN”というブランドのバトンが繋がったことは本当に嬉しい出来事でした。
開発陣の熱意はそこに留まることなく、さらに進化した“AFRICATWIN”を世に送り出すための努力を惜しんではいなかった…。
確かに、昨今のアドベンチャーカテゴリの隆盛が後押ししていることは想像に難くありません。
それでも、4年間という短いスパンで“フルモデルチェンジ”を遂げるというのは、採算がとれる車種として認識されていなければあり得ない話だと思います。
閑話休題。
で、こんな個人のブログがどこまで読まれているかは知りませんが…。
早速TMSにて、現車をご覧になられた方もいらっしゃると思います。
そして、恐らくは気付かれたと思います。
「あれ?車高低くない!?」
そう、なんと会場に国内発売予定として展示されていたのは、現行のSD04で言うところの『LDモデル』同様の“ローダウン仕様”だったのですから。
会場で実車を目にした方は、しばしその場で唖然としたことでしょう。
現地には行けなかった自分ですが、Facebookに次々と挙がってくる“失意の書き込み”を見てビックリ。
まさかとは思いましたが、プレスディから正式にメーカーHPに挙がった車輛情報により、改めて確認したところによると、
「国内仕様は、ローダウン仕様“のみ”」
であることが正式に判明しました。
何がって、事前に流れていた“プロモーション映像”では、デューンを嬉々として走り回る“CRF1100L”の姿が見受けられたことで、
「今度の新型は、現行モデル以上のオフロード性能を持つらしい」
「軽量化とパワーアップにより、戦闘力は相当上がるのでは」
などという確かな“期待感”を、ビッグオフエンスージャストに抱かせていたからに違いありません。
実際、現車も見ずに新型の予約注文を入れた方々を、自分は知っています。
その事実が判明してからというもの、FBでは
「詐欺じゃん!」
「もうキャンセルする!」
「これだったら次はもう“K〇M”にする!」
という叫びが引きも切りません。
なぜなら、その“ローダウン”の手法が
「サスペンションのストロークカット」
のみで行われているから。
今回、自分は新型への乗り換えを全く予定していなかったこともあり、意外と平静を保っていましたが、
「そう思われても仕方ないよなぁ。やっちゃったなぁ、ホンダ…」
という感想は正直なところ拭えません。
確かに。
冷静に、誤解を恐れずに言えば、“AFRICATWIN”にオフロードパフォーマンスを期待するユーザは、自分も含めて“マイノリティ”であることは否めません。
一説によると、現行の“SD04”においては、注文の大半を『LDモデル』が占めているという話らしい…。
となれば、“マーケティング戦略上”において、そのような商品ラインアップも間違ってはいない、ということなのでしょう。
確かに、“車高”という要因だけで“AFRICATWIN”を諦めていたユーザに対しては、幅広く門戸を広げることになるのかもしれません。
ただ、“マイノリティ”であるとはいえ、“AFRICATWIN”でダートを走る楽しみを見出しているユーザが少なからずいるということを、ホンダには忘れてほしくなかったのです。
そういうユーザから見れば、ホンダによる今回の国内投入の仕様決定は、単に
「自分たちは切り捨てられた」
としか映らないのではないでしょうか。
2016年2月のある平日、自分は福島県のあるモトクロスコースにいました。
会社を休んでまでそこに向かった目的は、
「新型“AFRICATWIN”のメディア向け試乗会に参加するため」。
ジャーナリストでもなんでもない、“一介の素人”に過ぎない自分が呼ばれた理由は、
「従来の“AFRICATWIN”を知るユーザの目線で、新型を評価してほしい」
ということでした。
他にもっと適任者はいるだろう、とも思いましたが、こんな機会は二度と無いと考え、参加させていただきました。
その時の感想を、FBコミュニティ『日刊アフリカツイン』のページで報告させていただいたのも今は昔の話です。
正直に言えば、その試乗会で一番感動したのは、新型“CRF1000L”のパフォーマンスではありません。
それは、自らが自信をもって送り出した、新生“AFRICATWIN”の開発陣の方々の熱意に他ならなかったのです。
「今までのXRVと比べて、ここはどうでしたか?」
「ここのところは、開発ですごく苦労したんですよ」
「この色を量産で出すのが、なかなか大変で…」
と、自分のような素人の拙いインプレッションでさえも、一言も聞き漏らすまい、とする熱意。
そして、
「今度の“AFRICATWIN”、良いでしょう!」
という、開発陣のとても誇らしげな笑顔が、自分は今でも忘れられないのです。
その方々が、さらに4年という時間をかけてブラッシュアップし、今回送り出した新型“AFRICATWIN”が『CRF1100L』です。
そんなバイクが悪かろうはずはなく、それは自分にもプロモーション映像からビンビンに伝わってきました。(よね!?)
だから“モノ”は良いんです!
マズかったのは、その“売り方”であると。
正直に言ってしまえば、最初自分は「新型を出してくれただけでありがたい」というふうにも思っていたんですよね。
でも、現行モデルで選べていたものが今回は選べない、というのは、さすがにちょっと寂しいよなぁ、と改めて反省した次第です。
もちろん、マニアックに考えれば、欧州仕様の部品に組み替えることで、本来のサスペンションストロークを得ることも出来るでしょう。
しかし、国内モデルとして“本来の仕様を選べない”というのは、よりオフロードでの楽しさを進化させた『CRF1100L』をしてあまりに寂しい、としか言えません。
ユーザとしては安心して長く乗れる相棒として、ホンダの製品を選びたいと考えている人も多いと思うのです。
もちろん、自分もその一人です。
今回の新型“AFRICATWIN”のラインアップとして、大きく分けて
・オンロードからオフロードまで、シンプルに走る楽しさを追求した『CRF1100L』
・どこまでも安全快適に走り続ける、タフさを身に付けた『CRF1100L ADVENTURE SPORTS』
の2機種が存在します。
そこで自分が考えたのは、
「標準車(CRF1100L)だけでも、“欧州仕様”をそのまま国内のラインアップに加えてほしい」
ということ。
現行の『CRF1000L』に比べて、より軽くよりパワフルにと全方位に手が入った新型『CRF1100L』です。
その純粋な走りのポテンシャルを追及したであろう“標準車”こそが、オフロードで“AFRICATWIN”を楽しむユーザが心待ちにしていたモデルに違いないと考えます。
もちろん、今回国内向けに用意された『LDモデル』は、幅広く受け入れられる仕様として販売してほしいです。
もう車輛カタログが出来上がっているので、すぐに追加投入されるのは難しいかもしれません。
1年後、遅くても2年後のマイナーチェンジの際には、是非ともラインアップに追加していただきたい!
もしくは、先行して年内に投入される『ADVENTURE SPORTS』に対して、年明けのリリースとなる“標準車”なのでそのタイミングで間に合ったりしませんかね?
だってほら、車輛自体は“熊本”で造られているわけですし。
それでも確かなことは、ホンダに対して
「国内でも本来の欧州仕様のニーズはある!」
と認識させることが第一。
そのためには、「AFRICATWINでオフロードを楽しみたい」と願う我々が、声を挙げることが必須と考えます。
声を挙げる場所は、
・DREAM店
・メーカーHPの「お客様窓口」
・SNS
などが考えられます。
中でもディーラーネットワークである『DREAM店』は、販社である『ホンダ・モーターサイクル・ジャパン』との距離も近く、ユーザの声が届きやすいのではないかと考えます。
ニーズがあるところにマーケットは成立し、結果として商品が生まれます。
黙ってホンダを見捨てるのではなく、自分が愛する“AFRICATWIN”だからこそ、自分らもブランドを育てる手伝いをしようじゃありませんか。
自分はもう、“空白の14年”に戻って欲しくはないのです。
「自分の好きな“AFRICATWIN”だから、これからも乗り続けたい」
という想いを、地道に発信していきたいと思います。
きっとそれが届くと信じて。
それを受け止めてくれるメーカーだと信じて。