内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

エンジン始動不良につき…【その2】

先日、『エアクリーナーエレメント』を交換したものの、症状が改善しなかった我が愛機アフリカツイン。
次に着手すべきは、

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そう、『スパークプラグ』交換です。

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このプラグ、NGKの製品ではありますが、販売店では通常売っていません。
CRFのプラグ交換サイクルは、なんと40,000km(!)という超ロングライフ。
そのため、外側電極にプラチナを採用したスペシャルでして、そのため“ホンダ純正部品扱い”となります。
だから、値段も標準品の倍以上するんですけど…。

作業前に交換手順を“サービスマニュアル”で確認します。
すると、
「左右のラジエター固定ボルトを外して、ラジエターを引っ張り出し、そこからアクセスする」
と書かれているではありませんか。
(CRFのスパークプラグは、気筒あたりメインとサブの2本あり、これはメインプラグの話)

「そんなところに、手が入るほどの隙間が出来るの??」
と自分はとても懐疑的。

そんな悩みをFBに書き込んだところ、『拾う神』とはいるものです。

「他のやり方もあるので、お手伝いしましょうか?」
とメッセージをいただきました。
誰かと思えばその御方、

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“CRF1000Lの開発チームメンバー”の『瀬尾さん』じゃないですか!
正真正銘『プロ中のプロ』、超『中の人』からそんな申し出をいただけるなんて!
自分もエラくなったもんです…というのは冗談で、マジで恐縮しっぱなしなんですけど!

確かに『RIDE AFRICATWIN アサマビバークミーティング』など、様々なところで面識はあるものの、あんな個人のFBや拙いブログを見て直接連絡をくれるだなんて…

「なんてイカした会社なんだ、ホンダ!」

かましいとは知りながらも、こんな機会も二度と無いかもしれません。
「御指南のほど、よろしくお願いします!」
ということで、早速ご自宅(!)のガレージにお邪魔してきました。

先生曰く、サービスマニュアル(以下SM)記述の「ラジエター隙間からのサイドアクセス」ではなく、
「シリンダーヘッド上からのトップアクセス」
でやってみましょう、とのこと。

これ、自分も考えたんですよね。
CRFのシリンダーはそれほど前傾していないので、いろいろと外す必要はあるもののそれさえクリアすればそれが一番ラクで確実なのでは、と。
そのやり方をプロから教えていただけるなんて、本当にラッキーです!

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早速作業開始!
当然ながら“トップアクセス”ということは、シリンダーの上に載っているものをどけていく必要があります。
まず『フューエルタンク』を外すために、左右のフロントサイドカウルとタンク下の帯状のカバーを外します。

タンクのマウントボルトは、後方に1箇所だけ。
ただし、それにアクセスするために、『シートキャッチ』のタワーを外します。
この時、シートロック解除用のワイヤーを、タイコの部分で外してしまったほうがラクです。

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また、このタワーのボルトがフレーム内側に存在するため、ボルトを緩めて取り外す際に、誤ってフレーム内に落としてしまわないように注意が必要です。
(これを落としてしまうと、リカバリーが相当面倒になる可能性あり)

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タンクのマウントボルトが露出したら、それを外し、

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マウントボルト後部に被さっている『樹脂パーツ』を片手で捲りながら、もう片手でタンク後端を引き上げて浮かします。
(ここは先生もパワープレイ。(笑)自分も以前同じように“力技”で外しました)

フューエルタンクの底部に、差し込みのゴムホースが2本とカプラーが2個、クイックカプラーで固定されているフューエルホースが1本。
これを外すために、普段自分は角材を差し込んでワークスペースを確保しています。
今回は二人いたので、自分がタンクを持ち上げている間に、先生が作業しました。

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タンクを外すとこの通り。
次は『エアクリーナーボックス』です。
この部品は、エレメントケースを含む左右ダクト部分と、センターのエアボックスから構成されています。
左右のダクト部分は、前端部の裏側にダボが一か所引っ掛けてあるのみ。

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ボックス本体は前に1箇所、後ろの両側に1箇所ずつ、計3本のボルトで固定されています。

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この時、左右のボルトを外すと、ボルト穴のダンパーラバーの下にワッシャーが入っており、これもフレーム内へ落下させないように注意しましょう。

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次に、左側エアダクトの裏側にカプラーを固定しているツメが2箇所ありますので、これをカプラーごとダクトから外します。
そして、ボックス後部にあるインジェクターボディへ繋がる『インシュレーター』のバンドを左右気筒それぞれ外します。

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右側はインシュレーター後部にあるボルトを緩めるだけですが、左側のボルトが見当たりません。

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これはエアボックスの左下部からアクセスしますので、ロングシャフトのプラスドライバー(2番)があると便利です。

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これを外すことでボックスユニット全体を浮かせることができますが、最後にボックス下部に繋がっているゴムホース2本と青いカプラー1個を外しましょう。

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注意すべきは底部右側から見えるゴムホース。
これはシリンダーヘッドから繋がるブリーザーホースなんですが、このクランプがちょっと固いです。
ラジオペンチでも作業できますが、ロングノーズプライヤーか先が90度曲がったホースクランパーなどを使用すると確実です。

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これで『エアボックス』が外れました。
この時、ついでに3本あるピンク色の透明な『ドレーンホース』内にオイルが溜まっていないかどうか確認しておきましょう。
ここがオイルで満たされていると、エアボックス内にオイルが混入します。
(自分は3本中2本にオイルが並々と溜まっていました。反省)

シリンダーヘッドにアクセスするためには、最後にイグニッションコイルプレート』を外します。
ただし、このプレートを外すためには、その後ろにあるインジェクターボディ』を外して後ろにずらす必要があります。
インジェクターにゴミが入らないようにガムテープで目張りして、

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メインフレームの下側左右から『インテークマニホールド』のインシュレーターボルトを緩めます。
インジェクターボディ』は完全に外さなくてもOKなので、スロットルワイヤーなどはそのまま。
とにかくこれを後ろへずらすことで、コイルプレートを後ろへずらすことが出来ればOKです。
コイルプレートは、左右のダボがフレーム左右を繋ぐメンバー下にある穴に差し込まれているだけ。

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これを後方へずらすと、

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プラグホール発見!
(画像はすでにプラグキャップを外し、プラグレンチを差し込んだ状態です)

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実はこの『プラグキャップ』を真上へ引き抜くのに、それなりにチカラと注意が必要。
プラグトップの“ダルマ”部分にキャップ内側のキャッチがしっかりと嵌まり込んでおり、これがちょっとチカラを要します。
ちなみにこのプラグの“ダルマ部分”、他のプラグでよくあるネジコミ式のタイプではなく、プラグと一体となっています。
くれぐれもプライヤーなどで咥えて、緩み止めのために…と締め付けるのは厳禁!

壊れる場合があります!

閑話休題
プラグを抜き取るには、やはり『車載工具のプラグレンチ』が一番です。
このレンチを奥までしっかりプラグに差し込むと、内側のラバーリングのキャッチが、確実にプラグを引き上げてくれます。
またヘッドが10mmのソケットで回せるので、作業性も良好です。

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自分はプラグレンチをプラグホールに先に落とし込み、しっかりとプラグに差し込んだ上で、10mmのソケットを先に被せ、上からエクステンションバーと組み合わせたラチェットレンチでソケットを迎えに行きました。
この時、なるべく垂直にプラグにアクセスするためには、
メインフレームの外側、左右ラジエターを繋ぐウォーターホースの前側
からエクステンションを差し込むのが良いと思います。

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取り外した『メインプラグ』と新品を比較。
イリジウムプラグ”なので新品時から先端は極細なのですが、やはり25,000km走ったプラグはそれなりに減っていますね。

またシリンダー左右からそのままアクセスできる『サブプラグ』は、メインプラグに比べて焼け色が少し薄いものの、劣化度合いはそれほど変わりませんでした。
ここは迷わず『4本同時交換』をオススメします。
プラグ単価が高いので、ちょっと躊躇する気持ちは分かるんですけどね…。

あとは元通り組み戻して、プラグ交換終了です!

…えーと、実際に作業をしてみての感想なんですが、
「これ、なかなかに大変ダナー」
というのが、自分の偽らざる印象です。

先生はこのバイクを知り尽くした“プロ”ですので、部品一つを外すにも何も迷いがありません。
しかし、この作業を一般のユーザが気軽に出来るか、というと…ちょっと「?」ですかねー。
とはいえ、この作業を頻繁にやらずに済むように、という目論見で、ロングライフのスペシャルプラグが採用されているわけですから。

今回“トップアクセス”で作業しましたが、そもそも自分はSM記載の“サイドアクセス”の方法でプラグ交換をしたことがありません。
なので、あくまでも想像の域は出ないのですが、それぞれの作業方法のメリット・デメリットを考察すると、

“トップアクセス”
【メリット】
・プラグキャップの位置を視認して、確実に作業することができる。
・プラグキャップを真上に引き上げることになるため、チカラを入れやすく、キャップ破損のリスクが少ない。
・プラグケーブルに無用なチカラを加える心配が無い。
・奥まった位置にあるプラグを抜き取るのが簡単。

【デメリット】
・アクセスするまでに外すパーツが多い!特にパーツを外すために、ホース・カプラー類を外すのが一部大変。

“サイドアクセス”
【メリット】
・左右ラジエターをずらすだけなので、外すボルトの数が少ない。
 (左右のドレーンホースなど、何本かのホースやハーネスは逃がす必要はあるけど)

【デメリット】
・ラジエターをズラしたことで、どの程度隙間が出来て作業スペースが確保できるのか?
 (手の大きい人は無理?)
・プラグキャップを真上に抜くだけのスペースがどれだけあるのか?
 (そもそもあれだけしっかり差し込まれたキャップを、チカラの入れにくい方向で抜き取れるのか?)
・プラグレンチに加え込んだまま、あのロングリーチのプラグを真上に抜けるだけのスペースがあるのか?
 (フレキシブルのマグネットピッカーで釣り上げるというウワサも)

実際、開発時にプラグキャップを外す際、キャップの“傘”の部分を破いてしまったという事例があったそうです。
マイナスドライバーでコジったり、プライヤーで掴んだりしたくなる衝動に駆られそうですが、そこはじっと堪えたほうが良さそうですね。

いずれにしても、少々ハードル高めな作業でした。(汗)
それでも、貴重なお休みにもかかわらず、お時間を割いて御指南くださった瀬尾さんには本当に感謝です。
ありがとうございました!

そして、ドキドキのエンジン始動…
「キュルルル、ボンッ…(シーン)」
ええっ…!?

どうやら原因は『スパークプラグ』でもなかった模様。がっくし。

その症状をみた先生が、右のスイッチボックスをあれこれイジっています。
そして一言。
「内田さん。これ、『キルスイッチ』の接触不良の可能性が高いですね…」

どうやら、このトラブルはSD04リリース直後に、症例が報告されていたのだとか。
対応としては『右スイッチボックスの交換』だそう。

調べたところでは対策部品が出たことで、現在はすでに“部品番号”が変更されているようです。

先日、友人がFBのコメントで教えてくれた“販売店のブログの事例が、そのまま当てはまることになりそうだとは…。
まあ、それを聞いたときに、
「プラグでダメあったら、コレかなー?」
という思いは自分にもあったんですけどね。

そして、これは“リコール修理対象”にはなっていないとのこと。
いずれにしても、一度販売店に相談してみないとですねー。ふむふむ。
(つづく)