リアに続いて、お次はフロント。
足回りを全て外すので、センタースタンドに加えてアンダーガードに台を噛ませてフロントホイールを浮かせます。
ここでちょっとした発見が!
フォーク下端のアクスルクランプと、トップブリッジ・アンダーブラケットのフォーククランプのボルト頭が、
“12mm→10mm”に!
以前から施されていたボルト頭の肉抜きと相まって、開発陣の軽量化への一途な想いを感じずにはいられません。
こういうところ、思わずウットリしちゃいますねー。
フロントフォークのアウターチューブはブロンズカラーですが、残念ながら『カシマコート』処理は不採用。
非常に潤滑性の高い金属表面処理で、'18の『SD04』で採用されていたので“この色”を見た瞬間から期待していたんですが…。
個人でお願いすると、結構するんですよねー。多分やりませんけど。
ちなみに、ブラケットからフォークを抜く前に、
うっかり『EERA(電子制御サスペンション)』のハーネスのコネクターを外すのを忘れていた…(>_<)
のは、ココだけの話です。(汗)
万が一、自重でフォークがストンと抜け落ちたら、ハーネスが千切れてもおかしくないですからね。
良い子の皆さんはやらないと思いますが、念のためご注意を。
フォークを抜いたら、お次はステム周りです。
レバーやスイッチ類はそのままにハンドルバーを外すので、上から吊っておきます。
バークランプ、ボルトの形状が『SD04』から変わっています。
キャップボルト+カバーから、肉抜きの施された10mmボルトに。
クランプも幅を詰めた形状となり、しかも前後方向が指定されたものとされたことで組付けも容易になりました。
そして、大径のステムナットもスチールのつば付きナットからアルミナット+ワッシャーへ材質置換。
こんなところにも、軽量化への執念を感じます。
「こんなに真面目にアップデートしてくれてるんだ…」
量産車に対して、ここまでの丁寧な作り込み。
『<s>モデル』の追加投入決定の早さなど、この“アフリカツイン”というバイクへの真摯な対応は、とても“大メーカー”のそれとは思えないほど。
こういう想いが造りに反映されているからこそ、根強いファンを産み出すのでしょう。
もちろん、自分もその一人なわけですが。
閑話休題。
トップブリッジ下のクラウンナットを外して分解完了。
アンダーブラケットにもしっかりグリスが盛られています。
ベアリング・カラー類は、組立時のグリスを全て拭き取って清掃。
ベアリングレースも同様に。もちろんアタリなどのない、きれいな状態です。
フロント周りをごっそり外して正面から撮影。
この車両は『Adventure Sports』なのですが、タイトなカウル開口部などを見ると、とてもその後ろにビッグタンクが控えているとは思えないほど。
実はアッパーカウルのインナーフェアリングで囲われた開口部(乗車時にメーター下に見える、ステアリングスペース)もかなり絞り込まれており、トップブリッジのフォーククランプボルトのアクセスは意外とタイト。
ソケットを嵌め込んだラチェットやトルクレンチでボルトをくわえるのは、なかなかに作業性が悪かったです。
そのくらいですかね、気になったところは。
アンダーブラケットに圧入されたベアリングに、たっぷりとリチウムグリスを塗布。
アルミ製のステムシャフトにも腐食防止のために塗っておきます。(ここまで塗りたくらなくても良いと思いますけど)
ステム上側のボールベアリングにも、摺り込むようにグリスを入れてカラーを被せたら
ここもステム上端とツライチになるまで、グリスを詰め込むのが自分の流儀。
その上にダストカバーを載せて、はみ出たグリスを拭き取ります。
特に『Adventure Sports』はホワイトフレームですからね。
やはりキレイにしておきたいじゃないですか。
最後に、下側のベアリングレースにグリスを載せたら、ステムシャフトのついたアンダーブラケットをそっと差し込みます。
ステム上のクラウンナットは、ステムレンチで締め込みます。
特殊工具を持っていない自分は、
レンチで目一杯締め込み
↓
一旦、緩めてから
↓
再度、手で思い切り締める
↓
仕上げに、アンダーブラケットを手で左右に振って動きを確認しながら、レンチで軽く増し締め
という手順で組むようにしています。
レース車であれば、力いっぱい手締めだけで済ませるんですが、これは1100ccのビッグバイク。
重量もあり速度も出るバイクなので、リスクヘッジのために工具でも締結しています。
最初に目一杯締め込むことでベアリングとレースを馴染ませてから一度緩めることで、位置関係を落ち着かせた状態で締め付け加減の調整をするイメージです。
この辺りはあくまでも“自己流”ですので、あくまでもご参考までに…。
あとは全てを組み戻して完成!
やはり足の長い『<s>モデル』の佇まいは、よりオフロードバイクらしさが際立ちますね。
とはいえローダウンモデルも、単体で見た時の違和感の無さは“仕上の妙”。
これはシートフォームを抜く形で下げていないからこそ、全体のバランスが保たれているのでしょう。
数値の設定も含めて、苦労されたんじゃないかなー。
さて、とりあえずこれで大物の整備は終了。
あとは“緊急事態宣言”が解除されるのを待つだけ…ではありますが、何よりもまずはきちんと安心して乗れるようになってほしいものです。
バイク乗り“だけ”の行動が、いたずらに取り上げられるのは、見ていてもイヤですからね。
もうしばらくはイジって眺めて楽しむことにします。
(つづく)