内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

『パフォーマンスダンパー』ってどうなの?

先日、友人から預かった“あるパーツ”。

以前から気になってはいたものの、ちょっとお高めなので導入は考えていなかったんです。

それに、

「レース車につけて、自分に違いがわかるのか?」

というのもあったりして…。

でもこのパーツ、最初に『セロー250』用とかで発売された時、結構話題になっていたもの。

そこにこのタイミングで、

「ちょっとつけてみて。しばらく預けておくから」

などと言われたら断る理由はありません。

 

それがこれ。

ヤマハ『パフォーマンスダンパー』です。

メーカーによると、

車体に発生する振動、変形を効果的に減衰させる車体制振ダンパー

とのことですが、振動はともかく「車体に発生する変形」なんて自分ごときに分かるのか?ってハナシですよ。

いやね、“縦剛性”とか“ねじれ剛性”とかって言葉があるくらいですから、フレームだってたわんだりヨレたりするんだって事くらいは知ってますよ。

でも、「それを自分が体感できるのか?」ってのは別問題ですから。

とはいえ、理屈はともかくプロのインプレによると

・振動の低減

・タイヤの接地感が向上

により、結果的に「乗り心地が良くなる」ということらしい。

 

でも、公道市販車のセローならともかく、YZはレーサー。

そんなバイクに“乗り心地”言われてもなー、と半信半疑。

何はともあれ、試してみようじゃないですか。

 

内容はこんな感じ。

これが『パフォーマンスダンパー』です。

まさに“ダンパー然”とした佇まいですね。

 

早速取り付けましょう。

まず下準備として、ダンパーボディのダストカバーがロッドの動きに伴いズレてしまわないように、半周分接着剤で固定しておきます。

ここからは取付作業。まずダンパーボディ装着位置に干渉するエキゾーストジョイントを緩めて

約90度エンジン側へ回転させます。

すでにエキゾースト側にはジョイントのツメが回転時に収まる切り欠きが設けられています。

さすがの純正オプションですね。

この時、ジョイントがエンジンに接触していないことを確認しておきます。

次にフロント側のダンパーステーを装着するため、左ラジエターのロアマウントボルトを外します。

付属のボルトにネジロックを塗布して

ダンパーステーを固定します。

この時、ステーの突起部分がメインフレームに突き当たっていることが重要です。

リア側のダンパーステーは、後部エンジンマウントを使用します。

取説によるとネジロック指定はナシ。きちんとトルク管理をして付属のボルトでステーを共締めします。

前後のステーの装着位置はこうなります。

 

そして最後にダンパーボディを取り付けます。

付属のボルトにネジロック剤を塗布し

フロント側はカラーとスペーサー、リア側はカラーを挟んで固定します。

こちらもきっちりトルク管理します。

これで出来上がりです!

 

ちなみに自分の車両は'22モデルなんですが、前モデルの'15-19モデルにも一部取付方法が変わりますが装着可能です。

各年式に対応する交換ボルト類ももれなく付属しています。

これは自分の'22モデルでは使用しなかったボルトですね。

 

で、早速走ってきました。

ここは福島県『モトスポーツランドしき』というMXコース。

左側にあるプレハブの建物が休憩所となっており、なんとエアコン完備という素晴らしさ!

個人的には

「暑い時期の練習はここ一択!」

と断言してもいいくらいです。(ちょっと遠いんですが、余裕の日帰りコースです)

まずはダンパーボディのみを外した状態で走行。

この日は朝から快晴だったんですが、前日までの雨の影響でコースは一部マディ。

ここは基本的にサンド路面で、水を含んだ箇所は重くなるためいきなり失速することも。

また表面はフラットに見えて、一皮剥けるといきなりフロントを持っていかれることもあるので最初は結構ドキドキでした。

コースレイアウトが大きく変わってから初めて来たんですが、大体のレイアウトは覚えているのでそれほど違和感はありません。

アップダウンの大きい、東北エリアによくみられるダイナミックなコースです。

30分くらい走ってコースに習熟してから、いよいよ『パフォーマンスダンパー』を装着。

何周か走ってみましたが、まず最初に感じたのは明確な“違和感”でした。

「バイクが重い。さっきのように思い通りに気持ちよく走れない…」

同じラインで周回しているのに、なんとなくタイミングが合いません。

特にS字の切り返しで、なんかワンテンポ遅れる感じ。

また、全体的に車体の挙動がまったりした感じになり、例えるならサスペンションのセットをSOFT側にアジャストしたようなフィーリングなのです。

 

このコースはアップダウンが大きく、そこそこスピードも乗せられます。

また、サンド路面でパワーを喰われるので、サスセットも少しHARDに振り、尚且つECUも一番パワーの出るFI MAPに。

これはいつも自分が“しどき”を走るときのベースセットです。

 

どうにも車体が重くなってしまったかのような印象に、

「違いは体感できたけど、そもそもこれって“こんなもの”なの?」

と違和感を通り越してもはや“不信感”を抱いてしまいそうな自分。

一瞬、外してしまおうかとさえ思ったのも事実です。

 

昼飯を食べて、気を取り直して午後の走行に。

コースコンディションはさらに回復し、走行ラインが硬く締まってきました。

すると午前中とは印象が異なってきました。

・回り込むようなコーナーで、車体がさっきよりもイン側に向く

・ブレーキングギャップに車体を傾けた状態で進入しても、リアホイールが左右に暴れない

などなど。

未装着時と比較して、確かに安定感の高さを感じることができました。

この表現が正しいかどうかわかりませんが、

「前後のタイヤがどこにいるか分かる」

というポジティブなフィーリングです。

最初に述べたプロのインプレにあった「タイヤの接地感向上」というのはこういう事か、と少し分かった気がしました。

 

この“しどき”にはミニコースもあり、午後には友人の練習に付き合う形で何周も走りました。

こちらのコースはメインコースに比べてよりフラットでワダチなどもなく、バンクがついているコーナーも多いため、スムーズなライン取りの練習ができます。

友人を先導しているのでスロットル開度は控えめではありましたが、

・コーナー立ち上がりのギャップで左右に振られない

・フロントタイヤが逃げてしまうのではという不安を感じない

などなど。

この印象はシッティングでもスタンディングでも、また片手で周回していても変わらぬ安心感・安定感を得ることができました。

 

改めて考察すると、装着してからの乗り初めに感じた違和感は、

・タイヤの接地感向上に伴い、インフォメーションが多くなりすぎたのではないか

・水を含んだ重たいサンドの路面において、接地感の良さがかえって抵抗を産んでしまっていたのではないか

リアタイヤのグリップ向上により、逆に路面にパワーを喰われてしまっていたのではないか

ということかな、と。

つまりはあの時の路面状況において、“パフォーマンスダンパーのメリットが裏目に出た”のでは、と推察した次第です。

確かにプロのインプレにも

「オプションパーツだからデメリットが無いとは言えない」

という言葉もありました。

 

自分の結論として、つまりこれは“セッティングパーツ”である、ということ。

ハイスピードなモトクロス的セクションでは、安定性とトレードオフで軽快感が失われたと感じられることもある、ということです。

その代わり、例えばガレ場のように荒れた路面や様々に路面状況が変化するようなシチュエーションにおいては、ライダーを疲れさせないような“お助けパーツ”になってくれるのかも知れません。

いずれにしても今日このコースで、メリットだけでなくデメリットの部分も“体感”できたのは大きな収穫だったと言えるでしょう。

 

次はこのパーツのメリットを享受できるであろう場所で試してみたいと思います。

なかなかに興味深いパーツですので、今しばらくお借りして楽しませていただきます!