内田輪店

モーターサイクル、特にオフロードバイクが大好物です。 趣味と物欲にまみれた日々を、若干反省しながら綴っていきます。(苦笑)

2015北海道ツーリング【7】

812日(水)

5時過ぎに目を覚まし、テントから這い出す。
外は重い霧が一面に立ち込め、身震いするほどの寒さだ。
とりあえずバーナーに点火し、コッフェルで湯を沸かす。コーヒーの香りにつられたように、バタくんも起き出してきた。
雨と夜露でたっぷりと濡れたテントとタープを見ると気が重いが、すぐ横に舗装路があるのが救いだ。
タオルで幕体の水気を拭きとり、きっちりと畳んでいく。水分を含んだテントは、収納袋に仕舞い込むのも一苦労だ。

途中のセイコーマートで朝食をとり、天気予報を信じて朝靄の中を北へ向かう。
この辺りは、ちょうど知床半島の付け根部分にあたる。本当は昨日知床を目指したかったのだが、オホーツク海越しに真っ黒い雲に覆われた羅臼岳を見た瞬間に気持ちが萎えてしまっていた。
真っ白い霧に包まれた根北峠は16℃。一枚下に着込んでいなければ、とても耐えられたものではない。思わずグリップヒーターのスイッチを「強」へと入れた。
峠を越えると、みるみる光が差し込んできた。まさかの快晴だ。
カッパを着ずにここまで来たことで、賭けに勝ったような最高の気分である。

ガスチャージを兼ねて、網走手前のセイコーマートで再度休憩。
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ここでバタくんとはお別れだ。道央に戻る自分とは別に、彼は最北端を目指す。
1日半という長いようで短い時間ではあったが、気の合う相棒と最高の時間を最高の場所で過ごすことができたことに感謝。
国道39号と238号の分岐で、クラクションを鳴らして別れ去った。旅の無事を祈るばかりだ。

北見の手前で国道333号へと折れる。そして遠軽から旭川方面へ。
その先、丸瀬布から無料開放されている『旭川紋別自動車道』(国道450号)にのれば旭川市街への近道だ。
この道はかなり流れも速く、とても快適だ。しかし、4年前に走っていることもあり、今回は並行して走る国道333号をそのまま行くことにした。
とはいえ、全くと言っていいほど、交通量が無い。よほどの物好きでもなければ、あえて下道を選ぶ必要はないのだろう。ならばここは物好きらしく、寄り道を楽しむことにしよう。

そして、並行して走っているのは、国道だけでは無い。
右に左に、JR石北本線の線路が見え隠れする。『本線』と名は付くものの単線であり、完全な『ローカル線』だ。
このローカル線に、『秘境駅』ファンなら見逃せ無い駅達がある。
『上白滝』『白滝』『旧白滝』『下白滝』の4駅がそうだ。通称『白滝シリーズ』という。
関東で言えば『浦和』みたいなものだ。ただし、この『白滝シリーズ』は一つの路線に4駅並んでいるのが大きな違いだ。
さらに昔は『奥白滝』という駅があったのだが、2001年に廃止され、現在では信号所となっている。

今回ここに立ち寄ろうと思ったのは、来年3月に行われるJR北海道ダイヤ改正において、街中にある『白滝』を除いた残りの『秘境駅』3駅が廃止される、というニュースを見たからだ。
この日、ノープランだった自分がこのルートを選んだのも何かの縁だろう。となれば、折角だから訪ねておこう。
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遠軽方面から、最初は『下白滝』。
2面2線のホームに、プレハブ仕立ての味のある駅舎は、なかなかに豪華で立派な造りだ。
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次が『旧白滝』。
ここはなかなかに強烈で、1面単線のホームに待合室がポツリ。
驚いたことに、写真を撮っていたら一人の男性が歩いてやってきた。聞けば、ちょうどいい時間の列車がなく、隣の『下白滝』から歩いてきたらしい。
地図上ではざっと4kmはありそうだが、いかにダイヤが薄いかが分かろうというものだ。
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そして『白滝』。
ここは街の中心部にある駅なので、造りは立派である。ホームも2面3線と、この路線にしては贅沢に思えるほど。この出で立ちにして、悲しいかな無人駅である。
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最後に『上白滝』。
これまた、テレビドラマに登場しそうなほどに味のありすぎる駅舎だ。待合室がきれいなのは、それだけ地元の人に愛されているということか、それとも汚すだけの利用者が居ないということなのか。いずれにしても、「この駅で寝てみたい」と思わせるのに十分だ。
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そして、このダイヤの薄さに驚愕!1日に上下各1本ずつとは…。

駅を満喫している間に、自分のような『物好き』がやってきた。
まさか、ここで横浜ナンバーの車に出会うとは。
旭川方面から来たようで、この先の北見峠では雨が降っているのだそうだ。
聞きたくない情報ではあったが、さっきまでの青空から徐々に雲が増えてきていたことは事実。これは先にカッパを着ておくのが賢明と判断した。
それ以上に、先ほどから雷鳴が響いていることが気になっていた。これから行く先はどうなっていることやら。

北見峠を登り始めるや否や、大粒の雨が降ってきた。
叩きつけるような雨粒の威力に、「これで少しバイクがキレイになるかな」などと呑気に構えたのも束の間、すぐ近くに閃光が走った。
ヤバイ、完全に雷雲だ。稲光と雷鳴が交互にやってくる。この峠には、やり過ごせるような場所は皆無だ。これほど標高の高いところで、停止させるのも怖すぎる。
腹をくくって、ひたすらGS-Aを前に進めるしかない。峠を越えて一気に下って行くと、小止みになるのと同時に雷も通り過ぎていった。生きた心地がしないとは正にこの事だ。

雷から逃げるかのように、上川層雲峡ICから自動車専用道である愛別上川道路に飛び乗り、比布北ICへと一気にワープ。その頃には夏の日差しが戻ってきており、デジタルメーターの気温計も久しぶりに30℃を超えていた。朝から15度近くも気温が上がった事になる。北海道のスケールの広さを実感する時だ。
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旭川市内は32℃と猛烈な暑さ。
さすがにカッパを着たままでは耐え切れず、セイコーマートで身軽になってアイスでクールダウン。ホッとして走り出したが、5分と経たずにまた雷雨に祟られる。ビルの軒先で、脱いだばかりのカッパに再度袖を通す。
あまりの激しい降り方に、早くもキャンプをする気が失せてしまう。札幌にビジネスホテルを取り、国道12号を南下することにした。
三笠市街で三たび激しい雷雨。市街地にもかかわらず、随分と近くに稲光が落ちている。道路がまるで川のようだ。重量車のGS-Aとはいえ、ハイドロプレーニングにも注意が必要だ。

国道275号で札幌市街に入ると、ちょうど帰宅ラッシュの真っ最中だった。
自家用車での通勤が多いのだろう、都内を彷彿とさせる混雑ぶりに、さすがにうんざりする。まだカッパは着たままだったが、夕方の気温はさすがに低く、蒸し暑さを感じずに済んだ。
途中、サッポロファクトリーで会社の元同僚と2年ぶりに再会。
結婚して札幌に嫁入りし、こっちで仕事をしている。引っ越す直前に顔を合わせて以来だったが、元気そうで何よりだ。

大通公園に近付くにつれて、交通量はさらに倍増していた。
タクシーに阻まれて、ビジネスホテルになかなか近付けない。
道内は右折レーンがあまり無く、右折用信号もほとんど無い。こういう市街地で右折するのは、少しばかり緊張を伴う。
18時頃に宿へ到着。さすがに疲労困憊だ。最低限の荷物を持ってチェックインし、まずは部屋でシャワーで汗を流す。

一息ついて、夕飯を食べに外へ出る。すでに雨は止んでいた。
宿でサービス券をくれたので、『SAMURAI』というスープカレー専門店へ。やはりここは札幌、久しぶりに是非とも食べたかったのだ。
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野菜たっぷりのスープカレーは、スパイシーで美味い。
ボリュームもたっぷりなのが大満足だ。ただ、サービス券で生ビールが付いてきたこともあり、大盛りのご飯は少々やりすぎたようだ。
さすがに満腹で店を出た。まだまだ夜はこれからとばかり、街はアジア系の観光客で溢れていた。

【今日の走行距離:446.9km
(つづく)