組立途中で挫折し、プロに託したフロントフォークが返ってきました。(ホントニ、スミマセンデシタ…)
ごく小さな点サビが見られたとのことで、きっちりインナーチューブの研磨までしていただき、もう感謝しかありません。
やっぱり最初からお任せするのが、結果的に安心というもの。
今回は中途半端な状態で投げてしまったことを深く反省した次第です。
そして、ここで小ネタ。
今回、こちらで事前に用意していたフォークオイルを使ってもらいました。
指定オイルの番手は“10番”ですが、基本的にタンデムしないので、もう少し動きのスムーズさを出すため片側だけ“5番”にしてみました。
この左右の番手違いって、別にNGではありません。ロードレースなどではセッティングの範疇で使用される手です。
これは“10番”と“5番”を規定量の半分ずつ混ぜることで、“7.5番相当”のオイルを作るのと狙いは同じこと。
確かにフォーク単体では左右で動き方に違いが出ますが、車体に組み付けてしまえばトップブリッジ・アンダーブラケット・アクスルシャフトの3点で左右が締結されるため、連動した動きとなります。
オフロードの場合、ジャンプやギャップにおけるフォークの伸縮はタイヤが受けた衝撃が伝わることで行われるため、基本的には同じタイミングで左右の動きが連動します。
ただ、唯一例外があって、それはブレーキング時。
アフリカツインなどのビッグオフを除いて、ほとんどのオフロードバイクのフロントブレーキは片側にしかついていません。
つまり、ブレーキを掛けた瞬間においては、制動力がキャリパーブラケットを通じてフォークに伝わることで“縮める方向で作動する”という現象が起こります。
これは減速Gでフォークが沈む前に一瞬だけ生じる動きであり、ごく厳密にいうとその瞬間だけはフォークの動きに左右でズレが生じることになるわけです。
今回フォークの返送時にいただいたメールには、
「ブレーキ側のフォークに“10番”入れてあるから」
という注記がありました。
つまりは、すこしでも動きの辻褄を合わせるために、先に沈み始めるフォークの方に硬いオイルを入れてくれたという次第。
こういうことをサラッと配慮してくれるあたりが、プロのプロたる所以だなぁ、と改めて感謝。
“MONDO MOTO”の市川さん、今回も素敵な仕事をありがとうございました。
さて、組んでいきましょう。
※ここからは完全に自己流です。
手順などは作業者それぞれの考え方ややり方があって良いと思います。
大切なのは“考えてから作業する”ことであって、個々人が納得できれば良いと考えています。
あくまでも“読み物”としてお楽しみいただければ幸いです。
フォークの突き出しは“ゼロ”指定なので、とりあえずこの位置。
ちなみに一般的に“突き出し”の数値はトップブリッジ上面から、“フォークトップキャップ”の下にある“アウターチューブ上端”までとなります。
とりあえず左右のフォークを“三又”に差し込み、突き出しを“ゼロ”に合わせたところでフォークが抜け落ちない程度に軽く三叉のピンチボルトを締めます。
その状態で、アクスルシャフトを差し込んで、手でスムーズに締め込めるかをチェック。
ここで工具を使わないとアクスルが締められないのであれば、シャフト穴の高さが左右で違っている、ということになります。
実際、今回スムーズに手で締められず、右フォークの突き出しをほんの少し増やしました。
どの位増やしたかというと、
このくらいです。
さっきの画像とアングルが違うので分かりにくいかもしれませんが、突き出し量は0.5mmもないと思います。
この現象、原因は“フロントフォークの自由長の違い”によるもの。
内部構造や部品精度、組み付け精度などの様々な原因により、伸び切り状態でもフォークトップからアクスルシャフト穴までの距離に個体差が生じている、ということですね。
今までの経験から言えば、レーサーよりもサスペンションに掛けられるコストが厳しい市販車ではそれほど珍しいことではないと思います。
大切なことは“突き出しの数値”ではなく、いかに左右のフォークがストレスなく伸縮するか?ということ。
実際、ここで勢いだけでアクスルシャフトを組んでしまうことで、フォークの伸縮に引っ掛かりを感じたり、オイルシールに余計な負荷がかかることで早期のオイル漏れに繋がることがあったりします。
フォークの左右位置が決まったので、三叉のピンチボルトを本締めしていきます。
締め付けトルクはこんな感じ。
“トップブリッジ”は3.2kg・m(単位、これで合ってるかな?)、“アンダーブラケット”(ここでは“ボトムブリッジ”)は2.7kg・mとなっています。
レース車のYZでは上下共に2.1kg・mであることを考えると、かなりのトルク値ですね。
個人的には“アンダーブラケット”側だけでももう少し締め付けトルクを減らして摺動抵抗を軽減したい気分ですが、まずは数値通りに。
特に理屈として説明できないのですが、自分はいつもアンダーブラケット側からピンチボルトを締めていきます。
ピンチボルトが2本の場合は、必ず上側から締め始めます。
これは車体の中心側から締めていくことで、歪みを外側へ逃していくようなイメージですね。
この部分は割り締めなので、片側を締め込むともう一方のトルクが弱まります。
なので、上→下→上→下…と少しずつ締めていくことで、規定トルクに近付けていきます。
重要なのは“一気に、勢いよく締めないこと”。
プリセット型のトルクレンチを使用しているので、規定トルクに達して「カチッ」と力が逃げた瞬間に締め付けを止めないと、さらに締まってしまいます。
同じ理屈で、“トップブリッジ”は下側のピンチボルトから。
ウインカーステーが共締めとなるため、ディープソケットを使用します。
CRMは左フォークのアクスルブラケットに直接ネジが切られているため、アクスルシャフトをフロントホイールに通したら、まずは規定トルクで締め付けてしまいます。
その後、フロントアクスルホルダの上側ナットを規定トルクで締めてから、下側を締めていきます。
これは上→下→上→下…と順番に締めていくのではなく、右フォークのブラケットとアクスルホルダの上側の面を固定してから、下側は割り締めとしてアクスルシャフトをホールドするため。
最後にブレーキキャリパー。
キャリパーボルトを差し込んだ状態ではキャリパー本体にガタがありますので、ブレーキをかけた時にキャリパーが引き込まれる方向(上方向)にキャリパーを押さえて位置を決め、
規定トルクで締め付けます。
やっとフロント周りが組み上がりました!
陽気に誘われて、CRMの軽やかな走りを40kmほど堪能。やっぱり速いなー、コイツ。
なんとなくしゃがみ込んでリアショックを覗き込んだところ…
うわ、マジか…>_<
前の次は後ろってことですか、そうですか。
まあ、なんとなく予想はしてましたけどね…。
帰宅するやいなや、ちゃっちゃとリアショックを取り外し。
この程度のバラしでショックボディが引き抜けるんだから、設計者に感謝しかありません。
はい、間違いなくオイルシールが抜けてますね。合掌。
もう今回は一切の躊躇もなく、主治医の元へ…。
市川さん、よろしくお願いしまーす。
(つづく)