このTT250Rが新発売された1993年当時、自分が乗っていたのは'91『DT200WR』(3XP1)でした。
大学4年の時、当時の愛機'88『V-max』が“もらい事故”に遭い、相手から出た保険金で修理代を払おうと思ったら、当時お世話になっていたバイク屋の店主が一言。
「修理代は後でいいから、オマエもDT買えよ」
当時のエンデューロブームに乗っかる形で、そのバイク屋でもエンデューロチームが発足。
そして、新発売されたDT200WRのプロモーションビデオで、今はなき『茂原モータースポーツランド』のテーブルトップで捻りまくる“デイモン・ブラッドショー”の姿にすっかりヤラれたチーム員はこぞって新車を購入。
先立つものが無かった自分でしたが、“棚ぼた”のお金を得たことでまんまと店長の企みに乗ってしまった次第です。
(その後、V-maxの修理代を払うのに、エラく苦労した思い出が…)
そして、自分にとっての初の2st車。
最初のバイクだった『XLR BAJA』とは比べ物にならないパワーと軽さにすっかり虜になり、エンデューロや林道などオフロードを走りまくってました。
肘を張ったライディングフォームに、フェイスガードという出で立ちが懐かしすぎる…。
ここは“HARP”を名乗る前の『セーフティパーク埼玉』(Aコース)ですね。
さて、閑話休題。
まずは“フロント周り”からやっていきますか。
当時としては珍しい、別体式のハンドルクランプ。
前後方向を入れ替えることで、ハンドル位置が変更できます。
新車時のセットは“前側”。結構“攻めた”セッティングですなぁ。
ああ、こういう構造、あったあった。
トップスレッドがダブルになっていて、それを位置決めワッシャーで回り止めするってヤツ。
懐かしいですねー。
でも、上下のスレッドナットの間にラバーリングが入っていて、それがヨレないような力加減で締め付けるって、意外と悩ましいんですよね。
そして、“三つ又”は上下共にアルミ製。
ホントに金のかかった作りしてますよね。感動です。
ステムナットは鉄製ですが、なんという凝った形状なのかと。
薄肉のナット部に対し、フランジを大径にすることで、軽量化と締結力を両立させています。
こういうの見ちゃうと、ヨダレしか出てきません。わかりますよね?
ベアリングもレース部も非常にキレイ。
やっぱりホントに2000kmちょっとしか走っていないのかなぁ。
それにしても、ステムシャフトまでアルミ製って、ホントに市販トレールかよ?ってくらいに素材に金かかってますね。
ベアリングは上下ともにテーパーローラー。しっかりとグリスを盛り込みます。
ステムシャフトに塗るのは、アルミの腐食防止の意味合いです。
ダストカバーとヘッドパイプの間に少し隙間が残るので、
ベアリングのリップシールとフレームの境にもグリスを擦り付けておきます。
正立フォークならではの上下クランプの締め付けトルク。
倒立フォークをこんな加減で締めたら、めちゃくちゃ摺動抵抗が出そう…。
というか微妙に歪むよね、タブンキット。
このバイクのタンクに書かれた“Open Enduro”のコンセプト。
それは造りにしっかりと現れていて、随所にそれを見ることが出来ます。
例えば、フロント周りではまずはこれ。
左側フロントフォークのボトムケースですが、アクスルシャフト受けに見られるこの突起。
これはホイールカラーがここに載ることで、アクスルシャフトを抜いてもすぐにホイールが脱落しない構造になっています。
いやー、めっちゃマニアック!萌えまくりじゃないですか!?
さらには、この妙にスッキリしたバネ下に注目。
そう、メーターギアが無いんです。
だから、当然メーターケーブルもありません。
さらには、キーボックスをフレーム内に埋め込むことで、メーターを極限までトップブリッジに寄せています。
その結果、ライトカウルがステアリング軸に限りなく近付いています。
狙ったものは、ステアリングの慣性モーメントを極限まで減らすことだと思われます。
まだ乗ってはいませんが、エンデューロレーサーと遜色ないほどのフロント周りとステアリングの軽さが感じられるのではなかろうか、と。
ハンドルクランプの標準セット位置が前方になっていることもあり、セルフステアのレスポンスの良さを狙ったものと推察します。
ここまではっきりとした目的を持って開発された、気合の入りまくった車体の造りには心から脱帽。
本当に感動の嵐です。(大げさ)
ちなみに、ライトカウル下のこのパーツはインナーチューブプロテクター。
ちょっとドレスアップパーツ的な意匠を感じますが、これが無いとやけにスッキリし過ぎていてライトカウルが浮いた感じに見えるてしまうんですよね。
ということで、フロント周り完成です。
ちなみに、フォークブーツをめくって確認したところ、摺動部のインナーチューブの錆やオイル漏れはありませんでした。
ハンドルをステアさせてみましたが、不安になるほどに軽い…。
これはダートに持ち込むのが楽しみでなりませんね。
(つづく)